第2話 魔族の生活

 「魔族になりたての私が魔王に?」

「まあ今すぐって訳じゃないけどさ、将来的にあなたが強くなれば魔王になって欲しいなって」


 さて、ノエルはどう答えるか。

もし拒否されたらどうしようかな。


 「もし仮に私が魔王になったとしてどうするつもりなんですか?」

「全ての魔物を支配して人間と和解してほしい」

「うーん……なるほど、わかりました。できる限り頑張ります。あなたに命を救われたわけですし」

う~んいい子。

義理堅いね。


 「ところであなたの両親だったそれはどうするの?」

「……」

「まあいきなりのことだしすぐ決めろっていうのは酷だよね、私が預かっとくからどうするか決まったら教えてね。」

『発動:空間魔法 ストレージ』


 空間魔法 ストレージ 物をしまっておくための空間を作り、その空間に接続する魔法。その中は時が流れていないから遺体の腐敗も防げる。

「あなたの両親、顔似てないね」

「……よく言われます」



 「これからノエルが魔王になるための特訓しなきゃだし今日から私の家に住んじゃう?」

「……お願いします」


 しかしこの子、両親の死体を目の前にしてもこんなに冷静でいられるなんてね。

「私と手つないでくれる? 家までは魔法で行く」

『発動:空間魔法 テレポート』


 私とオリビアさんの姿がその場から消える。一瞬でここではないどこかへ空間を飛び越え、転移したのだ。


 「着いた。ここが私の家」

「……思いの外普通の家ですね」

オリビアさんが住んでいたのは一般的な2階建ての少し広い一軒家だった。

「偶然空き家見つけたんだ~、住み心地よくて気に入ってる」

「おじゃまします」


 家の中に入ると玄関から2階への階段とリビングが見える。

中も特に変わったところは無いようだ。


 オリビアさんに連れられて2階へ向かう。

「ノエルの部屋はここでいいかな?」

「はい、ありがとうございます」


 「でもちょっと困ったことがあってね」

「?」

「この家、ベッドが1つしか無いんだ」

「2人で寝られないんですか?」

「あなたは一緒でも大丈夫?」

「もちろんです」

「じゃあ問題は解決だね」


 「そういえばここは魔族だけが住んでいる小さな街なんだよ。」

「明日でいいので少し街を見てみたいです」

「オッケー」








 「ノエル~、お風呂沸いたよ~」

「それではお先に失礼します」

温かくて、疲れた心身によく染み渡る。


 魔族の体は食事を必要としないからなにも食べていないのにお腹が空かない。

特別な時以外ほとんどの魔族は食事をしないようだ。


 そういえばこの場所は、魔族だけが住んでいる小さな街だとオリビアさんは言っていた。

明日から魔王になるための特訓をするらしい。

今日の昼まで人間だった私がついていけるだろうか。

オリビアさんの期待に答えられるだろうか。





 「それじゃそろそろ寝よっか。明日から大変だよ、覚悟しといてね」

「……」

「そんなに緊張しなくていいよ。ゆっくり頑張っていこう」

「はい」

「じゃおやすみ~」

「おやすみなさい」

















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