第24話 「相談させてもらうね」

 明里ちゃんと百香のスマホが隠されるという事件が終息し、私は百香と二人でスタパにフラペチーノを飲みに来ていた。


「やっぱ期間限定のやつより定番のほうが美味しい」


「……そだね」


 私は百香との会話に気のない返事をした。


 高校に入学して一ヶ月が経過し、志道君との関係が少しずつ前進していくような気がしていたころに起きてしまったこの事件。


 最初は椎那たちが絶対に怪しいと思っていたが、その事件の真犯人はスマホを隠された明里ちゃん自身で、その事件が解決することはなかった。


 今のところ志道君と百香がクラスメイトの全員から怪しまれているということもないし、そのうちみんなの記憶からも消え去っていくことだろう。


 そんな事件よりも私にとって最大の事件だったのは、明里ちゃんが志道君のことが好きでめちゃくちゃ積極的にアタックしていることだ。


 シンプルに明里ちゃんが志道君のことを好きという事実に驚いたのもあるが、私がそれを事件だと思っているのは私も志道君に想いを寄せているからである。


 想いを寄せているとは言ってもまだ志道君を好きになったわけではない。

 とはいえ、同じ双子の弟妹としてシンパシーを感じているのは事実だし、その優しさや人間性に惹かれているのも事実だ。


 これだけ魅力的な人なら、いつかは志道君のことを好きになるという人が現れてもおかしくないとは思っていた。

 しかし、それは高校に入学してから半年後とか一年後とか、まだかなり先の話だと思っており、まさかこんなに早く志道君のことを好きになる人が現れるとは想定していなかった。


 高校に入学してからまだ一ヶ月しか経過していないし、よっぽどのことがなければ異性を好きになり、ましてや告白するだなんてあり得ないだろうと思っていたのだ。


 そんな風に考えていた時に現れたのが明里ちゃんだった。


 明里ちゃんは志道君への気持ちを包み隠さず伝えており、志道君に対する気持ちは本気なのだろう。

  そんな気持ちを伝えられている志道君は今でこそ迷惑そうな雰囲気を出してはいるが、一度気持ちを伝えられてしまえば嫌でもその相手のことを意識するのが人間である。


 明里ちゃんがめげずにアタックを続けたら、そのうち明里ちゃんのことが好きになってしまうかもしれない。


 そうなる前になんとかして志道君に対する自分の気持ちを確かめなければ、後悔してもしきれない状況になってしまう。


 今志道君に抱いているこの気持ちはただの仲間意識なのか、それとも友情なのか、それとも……。


「……那、新那? どうかしたの?」


「あっ、いや、ごめん何でもない」


「そう? 珍しくボーッとしてたから何かあったのかと思ったけど」


「大丈夫大丈夫。相談したいことが出てきたらいつもみたいにまた百香には相談させてもらうね」


 何をすればいいかなんて何もわからない。


 付き合ったこともなければ誰かを好きになったこと無いので、右も左もわからない状態ではある。


 だからと言って立ち止まるわけにはいかない。


 大丈夫、私ならできるっ


 頑張れ私。

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