第23話 「くっつきたいんじゃん」
「べ、別に私はそんなこと思ってないけどっ」
橘から『実は新那ちゃんが付き合いたいんじゃないの?』と言われた新那は顔を赤らませていたが、その指摘に関しては全面的に否定した。
否定されるとは思っていたが、そこまで全力で否定されると泣きたくなる。
「へぇ〜〜〜〜?」
「な、何? 本当に志道君のことは仲のいい友達としか思ってないけど」
「まあウチとしてはそう思っててくれたほうがありがたいけどさ。新那ちゃん顔も性格も可愛いしライバルになったら絶望的だからさ」
「そ、そんなことないけど……」
「椎名くらい性格が悪かったらいくら顔が可愛くても太刀打ちできそうだけど」
椎名程の性悪であれば確かに誰にでも勝ち目はありそうだ。
とはいえ男ってのは単純な生き物だからな。
どれだけ性悪な女の子だったとしても、顔さえ良ければコロッと落ちてしまう男子も相当数いるとは思う。
「おい、それくらいにしといてやれよ。シドが涙目だぞ」
「べ、別に嫌いってわけじゃないからね⁉︎」
「分かってるって。俺もそれがわからないほど拗らせてないから大丈夫だ」
新那のことは今回の件でさらに信頼することになったし、新那が俺のことを嫌っていないことくらいは理解している。
それでも、男子として『恋愛対象ではない』とはっきり宣言されてしまったも同然のこの状況で悲しむなというのは無理があった。
「よしっ、そろそろお昼休み終わるから帰ろっか。ほら、行くよ志道君っ!」
そう言って橘は俺の腕にしがみついてくる。
そしてうるさいくらい主張の激しい橘のお胸が、俺の腕に押し付けられる。
「おいっ、くっつきすぎだって離れてくれ」
「えー、これくらいいいでしょ? ほら、外国の人だって付き合ってなくても挨拶がわりにハグしたりするじゃん? まだ腕にしがみついてるだけなんだからハグされるよりよっぽどマシでしょ?」
そう言われて橘からハグされたシーンを想像するが、確かにハグはやばい。
正面から橘のお胸の感触を感じてしまったら、最悪気を失ってしまうまである。
橘は自分のお胸がそれ程の破壊力を秘めていることを理解さてほしいものである。
いや、理解しているからこそなのか?
だとしたらタチが悪すぎるが。
「ま、まあそれはそうだけど」
「じゃあいいじゃん。行こっ」
「こら! そんなにくっついたら迷惑でしょ! 離れなさい!」
「やっぱり新那ちゃんもくっつきたいんじゃん。まだ右腕余ってるからどうぞ」
「べ、別に引っ付きたいわけじゃないし!」
「俺の右腕だぞ⁉︎ 誰の権限でしがみついて良いって言ってるんだよそれ⁉︎」
その後、なんとか新那が橘を剥がしてくれてしがみつかれたまま教室に戻るという事態は避けることができた。
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