第20話 「返事は?」

 まさか傍観者だと思っていた自分が、思いっきり当事者だったとは思っていなかった。


「でもごめん。ウチも頭に血が昇って行動しちゃった部分があるから、まさか隠したスマホを志道君が見つけて、隠した疑いが志道君に掛けられるなんて思ってなくて」


 可能性はあるとはいえ、まさか俺が隠したスマホを見つけるとは思わないわな。


 こうして正直にスマホを隠したことを話しに来てくれて、謝罪をしてくれるのはありがたい話だ。


 すでに迷宮入りしそうな雰囲気だったからな。


 とはいえ、橘が俺のためにとスマホを隠して侑志と椎名を陥れようとしたその手段は褒められたものではない。


 侑志が兄弟だから、兄弟を陥れようとしたからという理由でそう思っているのではなく、スマホを隠された相手が侑志であっても侑志でなかったとしても同じことを思うだろう。


 俺のためを思って行動してくれた橘には申し訳ないが、そこははっきり伝えなければならない。


「ちゃんと謝罪しに来てくれてありがとう。俺のためにやってくれたのは本当に嬉しいし、俺も侑志が大っ嫌いだから正直スカッとする部分もあるにはあった。でも陥れるって方法はよくなかったんじゃないか?」


 俺がそう言うと、新那は意外な顔をして俺の顔を見た。


 新那からしてみればあんなクソ兄貴陥れられて当然だと思っているだろうし、俺が橘のとった方法について注意するとは思わなかったのだろう。


 そりゃあんなクソ兄貴俺だってどうにでもなってしまえと思うが、やって良いことと悪いことの区別はつけるようにしておかないと、手段を選ばず俺の悪口を言いふらしたりする侑志と同じになってしまうからな。


「うん。本当その通りだと思う。ごめん」


 予想外に橘は俺の言葉を素直に聞き入れ、謝罪の言葉と共にその場で深く頭を下げた。


 橘は本当に俺のことを想い、俺のために行動してくれたのだろう。


 そうでなければこんなに素直に謝罪ができるとは思えない。


「でも本当にありがとな。嬉しかったよ。このメンバー以外にも俺たちの味方をしてくれる人間がいて」


「志道君のことが好きなんだから当たり前だよ。それより、返事は?」


「え、返事?」


「うん。告白の返事」


 好きと言われてしまったのだから返事はしないといけないかもしれないが、どう返事をするかなんて考えていなかった俺は新那たちの顔を見る。


 しかし、全員頷いて返事はするべきという意見のようだった。


「あ、あれって告白になるのか? なんかその、ただの報告、って言ったら失礼かもしれないけど、告白っぽくなかったからさ」


「まあ確かに報告っぽかったね。じゃあもう一回言うよ。ウチ、志道君のことが好き。付き合ってください」


「--っ」


 何度も好きとは言われていたが、いざ本当に告白をされると反応に困る。


 それに女子に告白なんてされたことないから、なんて返事をするのが正解かわからないんだが……。


 橘に告白されてから十秒程の間に俺は様々なことを考え、自分なりの答えを導き出した。


「えっと--」

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