第18話 「志道君が好きなの」

 四人で犯人を探すことになった俺たちは、昼休みに再び集まり真犯人が誰なのかを考えていた。


「別のクラスの人間が俺たちのクラスに入ってきたら流石に違和感があって誰か見てるだろうし、多分同じクラスの人間だろうな」


「そうだね。私もそう思う」


「でも同じクラスの人間って言ったって、手がかりが無いんだから探しようが無いんじゃないか?」


 博司の言う通り目撃情報が無いのだから、他に犯人が誰かわかりそうな情報がなければ探すアテも無いが、そんな情報は一つも無く詰みの状態に近かった。


「……そうだな。情報が無さすぎる」


「ねぇ、ちょっといい?」


 四人で会話をしているところにやってきたのは、スマホを隠された被害者、橘明里だ。


 橘は普段侑志たちのグループにいる人間なので、校舎裏であるこの場所までやってくるのはあり得ない。


 それに、ここが俺たちの溜まり場になっているのは誰も知らないはずなのに、なぜ橘はここが俺たちの溜まり場であることを知っているのだろうか。


「橘? なんでここに俺たちがいるって知ってるんだよ」


「いや、ちょっと用があったから後つけて来たの」


 サラッとすごいことを言っているのに気付いているのだろうか。


 というかそれ、尋ねられても伏せておく内容だと思うんだが。


「……それでどうした?  スマホを隠された恨みを晴らしにきたんならそれはお門違いだぞ。俺たちは隠してないから」


 そうやって正直に言ったところで、侑志たちのグループにいる橘には信じてもらえないだろう。


 橘は侑志と椎名を信じ切っているだろうからな。


 そう思っていた俺に返ってきた言葉は、予想を遥かに上回る回答だった。


「うん。知ってるよ。だってウチのスマホ隠したのウチだから」


「……は?」


 橘以外の全員が目を見開き、橘の方を見た。


 要するに自作自演だったということなのか?


 だとするならば、なんでそんなことをしたのだろう。


「まあそりゃ驚くよね。ウチが自分でウチのスマホ隠しただなんて誰も思わないだろうし」


「ちょ、ちょっと待って橘さん。自分が何を言っとるのか理解してる? それは本当の話なの?」


「うん。理解もしてるし本当の話だよ」


「一井のスマホを隠したのも橘なのか?」


「うん。ごめんね、一井さん」


 真犯人についてなんの手掛かりもない状態で、急に出てきたのは真犯人に繋がる情報だなんて控えめなものではなく、真犯人自体だった。


 あまりにも急に真犯人が出てきたので、どのように話を進めるべきか逆に悩んでしまうが、何も情報が無いよりは、今の状況のほうがよっぽどマシである。


「橘、自首してきてくれたのはありがたいんだけど、なんで自分のスマホと一井のスマホを隠したんだ?」


「……私ね、志道君が好きなの」


「……は?」


 スマホを隠した真犯人から告げられたのは、今回の事件とは全く関係がなさそうな事実だった。

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