第17話 「許せない」
一時間目が終わった後、俺は新那と博司、そして一井を連れて教室を出て、いつも新那と二人でやってくる校舎裏へとやってきていた。
一時間目の授業が終わってすぐに教室を出なければ、侑志たちに糾弾されると思ったからだ。
「とんでもないことになってきたな」
「ああ。あれは流石の僕も腹が立ったよ」
博司が自分のことではないのに、自分のことのように腹を立ててくれているのは素直に嬉しい。
「私も。百花と志道君は絶対そんなことしないのに、二人を疑うなんて許せない」
そして、まだ入学してから一ヶ月そこそこしか経過しておらずそこまで深い関係が築けているわけではないはずなのに、新那が俺を信頼して博司と同様に怒ってくれているのが嬉しくてたまらなかった。
「ごめんっ! 混乱してる時に私が自分のスマホ見つけちゃったから余計に混乱させちゃって」
「百香は悪くない。百香は被害者なんだから。被害者を疑うなんて本当最低だよ」
被害者を疑うなんてあってはならないことだ。
一井はスマホを隠されたショックだけではなく、ありもしない疑いをかけられたことによるショックまで受けるのだから。
このままでは俺と一井が疑われ、犯人だと思われたままになってしまう。
この八方塞がりな状況をなんとか解決するため、俺は自分の考えをみんなに伝えることにした。
「……俺の予想でしかないんだけど、多分侑志も椎名もスマホは隠してないんじゃないかな」
「……それはどういうこと?」
新那は俺に鋭い視線を向ける。
そう言えばこの場にいる全員から反感を買うことは予想していたが、恐らくは俺の予想は正しいと思うので伝えないわけにはいかなかった。
「侑志も椎名もさ、わざわざ自分の立場を危うくするようなことはしないと思うんだ。あの二人はクラスで一二を争う人気者で、その立場に満足してるだろうし。それにあの二人にはアリバイがあるわけだし、あの二人が犯人ってことはないと思う」
「……まあそれはそうだね」
「俺の予想では侑志でも椎名でもない人間がやったことだと思う。犯人はその二人に恨みを持っていて、陥れてやろうとしたんじゃないかな」
「なるほどね。まああの二人は表面上はクラスの人気者だけど、恨みは買いやすいだろうからね」
「だからクラスメイトの総意が俺と一井が犯人だってことになる前に、犯人を見つけないと行けないと思う」
「よし、じゃあ犯人探しだな」
あくまで予想なので、侑志と椎名がスマホを隠したと可能性もゼロではないが、別に犯人がいる可能性が高いだろう。
まずは犯人を探さなければならないが、博司と新那に迷惑をかけるわけにはいかない。
二人は今回の件では当事者ではないのだから。
「俺と一井は当事者になっちまったからいいけど、博司と新那は無関係だし、無理して付き合ってもらう必要はないぞ」
「何言ってるの。そんなの一緒にやるに決まってんじゃん」
「俺ももちろん協力するぜ。もとより俺はシドと侑志には仲直りしてほしいと思ってるしな。まあ侑志は最低なやつだけど」
「二人とも……」
今日程友人の存在をありがたいと思ったことはない。
こうして俺たちは四人で真犯人を探すことになった。
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