第16話 「あんたなの?」
クラスメイトの注目は、『椎名のカバンの上に、なくなった自分のスマホがあった』というとんでもない発言をした一井から椎名へと移った。
椎名の鞄の上に一井のスマホがあったとなれば、真っ先にスマホを隠したと疑われるのは椎名だ。
様々な出来事がありすぎて、クラスメイトの注目の的は次から次へと移り変わっており、状況は目まぐるしく一変している。
「……椎名。百香のスマホ隠したの、あんたなの?」
新那は目を細め、語気を強めて椎名にそう迫る。
そんな新那の姿を初めて見た俺は、自分も新那のように強い人間になりたいと思った。
新那は嫌がらせをされてものらりくらりと交わしてみせるタイプで、激昂して相手に反撃をするようなタイプではない。
それは、新那が強い人間であることの証明でもある。
そんな新那が友達のことになると、冷静に、それでいて心に炎を燃やして心の中では激昂している、そんな姿に俺は憧れてしまった。
「わ、私は隠してない! さっきから言ってるけど、私侑志君たちとずっと一緒にいたんだよ? それなのに隠せるわけないじゃん」
問題はそこである。
侑志と椎名が結託している限り、この二人にはアリバイがあって何をどうしたってクラスメイトから疑われることはない。
何かしらの証拠が出てきてくれればいいのだが……。
「それに百香ちゃんだって志道君と同じで第一発見者なんだよ? 百香ちゃんって新那と仲良いみたいだし、新那を庇うために適当についた嘘なんじゃない?」
椎名は普段おちゃらけているように見えるのに、こんな時だけはこちらの穴を的確に指摘してくる。
椎名の言う通り、第一発見者である一井は俺と同じくクラスメイトから疑いをかけられるだろう。
俺が第一発見者として疑われているところを目の前で見ていたのだから、椎名の鞄の上に自分のスマホがあったとしても発言するべきではなかった。
とはいえ、一井の発言で俺たちの立場が若干なりとも優勢に傾いたのも事実なのでお礼は言いたい。
「そもそも目の前でシドが第一発見者として疑われてるんだぞ? 自作自演なんて一井がそんなハイリスクなことするわけないだろ」
博司も頭の回転が速いので、こんな状況では非常に心強い。
確かに、一井は俺が第一発見者として疑われていたシーンを目撃しているので、自分がスマホを椎名のカバンの上に隠したのだとしたら、スマホを見つけたとは言い出すとは思えない。
「俺たちは違ぁう! そう言ってるだろ!」
議論中に痺れを切らした侑志が突然叫ぶ。
その瞬間、教室中が静まり返った。
あまりにも複雑で光明の見えない状況にイライラでもしたのだろうか。
しかし、それだけ頭に血が上ってくれていればこちらとしてもやりやすい。
「おーい、朝のホームルーム始まるぞー」
そう思った矢先、担任の先生が朝のホームルームを開始するために教室に入った来たので、俺たちは議論を中断せざるを得なくなってしまった。
-----------------------
いつも私の小説をご覧いただきありがとうございます‼︎
昨日投稿したつもりができていませんでしたので、明日二話分投稿予定です。
よろしくお願いしマァス‼︎
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます