第15話 「ちょっといいですか?」
クラスメイトからも、そして教師からも誤った疑いをかけられたまま不登校になることを覚悟した俺に、救いの手を差し伸べてくれたのは、他でもない新那だった。
しかし、俺は新那の助けを求めてはいなかった。
それどころか、むしろ救いの手なんて差し伸べるのはやめてくれとすら思っていた。
なぜなら……。
「でも絶対怪しいじゃん。侑志君はずっと私たちと一緒にいたし、明里がお手洗い行って戻ってくる間に隠すのは絶対無理だもん。そうなったら志道君が怪しいって考えるのは当たり前じゃない?」
そう、俺は新那が俺の助けに入った場合、必ず椎名が口を挟んでくるだろうと思っていたから、俺の助けに入るのはやめてくれと思っていたのだ。
そうなってしまえば侑志の他に強敵が一人増えることになる上、新那にヘイトが向いてしまい新那への負担が大きくなってしまう。
しかし、そんな俺の考えを知らない新那は、俺に救いの手を差し伸べてくれた。
そして案の定、椎名は侑志を加勢してしまった。
しかし、クラスメイトからの信頼が厚い侑志と椎名を的に回し、自分たちに疑いがかけられているという最悪な状況に陥ってしまったというのに、俺は新那が自分をかばってくれたことを喜んでしまっていた。
「志道君は明里ちゃんのスマホを見つけてくれたんだよ? むしろ感謝されるべき人を疑うなんて絶対おかしい」
「でもでも〜、ドラマとか漫画とかでも第一発見者って疑われやすいじゃん? だから疑われても仕方がないって思うな」
それに関しては、俺も侑志からカウンターを喰らった時に後悔していた。
俺がスマホを見つけたと発言すれば、たとえ侑志にカウンターを喰らっていなかったとしても、俺が怪しいと思うクラスメイトは数人いただろう。
それは少し考えれば、スマホを見つけたと言う前に分かっていた話だ。
橘のスマホを隠していない俺が自分を責める必要なんて全くないが、安易にクラスメイトにスマホを見つけたと報告した自分を責めた。
「僕もシドは盗ってないと思うよ。朝登校してきてからずっと僕と一緒に喋ってたし。何より志道にそんなことする度胸は無い」
「博司……」
新那に続いて博司も俺に加勢してくれたおかげで、かなりの劣勢ではあるがまだこの状況をひっくり返せないわけではなくなった。
博司は正義感の塊のような人間なので、もしかしたら救いの手を差し伸べてくれるかも知れないと思っていた。
その期待にしっかり応えてくれる博司を俺はラブのほうで好きになりそうだった。
「そんなこと言われたって、志道君が明里のスマホを隠してない証拠がないと信用はできないなぁ」
確かにこの状況をひっくり返すには、もう何かしらの証拠がなければ、クラスメイトが俺のことを信じてくれることはないだろう。
何か明確な証拠があればいいんだが……。
「あ、あの、すいません。ちょっといいですか?」
クラスメイト全員を巻き込んで口論を繰り広げている中で、恐る恐る手を挙げて喋り出したのは新那がいつも一緒にいる一井だ。
こんな状況で手を挙げるということは、何かしら有益な情報を持っているのだろうか?
「もうっ。真面目な話してる時になんなの?」
「あ、あのっ、みんな混乱してたんで言い出せなかったんですけど、私のスマホも机の中からなくなってて、どこに行ったのかと思って探してたら……。し、椎名ちゃんのカバンの上に私のスマホが置かれてて……」
「……へ?」
どうやらこの問題は、更に混沌を極めるようだ。
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