第12話 「盗ったのは君かね」
前触れもなく突然大声でスマホが無いと言い出したのはクラスメイトの
橘は侑志と椎名のグループに属している女子生徒で、天真爛漫で優しくて面倒見がいいと言った印象がある。
椎名が教科書を忘れると、自分の教科書を貸すわけにもいかないので他のクラスの友達に貸してもらえるようお願いしに行ったり、掃除をしている最中にふざけている生徒がいると、その生徒を注意するような、侑志たちのグループに属している割には真面目な人間だ。
みんなから慕われている橘のスマホがなくなったとなれば、クラス総出で捜索をする程の大事になるだろう。
一体誰が何の目的でスマホを奪ったのだろうか。
いや、まだ奪われたと決まったわけではないが。
「トイレに行った時に落としてきたとかじゃないのか?」
「トイレ行く前にもうすぐ授業始まるしなと思って机にしまったんだ。だから机の中にないとおかしいんだけど……」
「それが本当だとするなら、誰かが意図的に動かした可能性が高いな」
「明里のスマホ盗るなんて最低っ。早く犯人を見つけないと」
侑志はクラスメイトから信頼されているので、側から見ていればこうしてトラブルがあった時に状況を整理して話を進めていく姿は頼りになるように写るだろう。
俺からしてみれば弟を意図的に蹴落とすだけの最低なやつなんだけどな。
あと椎名も最低とか言ってるけど、おまえも新那に最低なことしてるの忘れるなよ。
「みんな。明里のスマホがなくなったらしいんだ。もうすぐ授業も始まるから教室内だけみんなで手分けして探してくれないか?」
侑志がそう言うと、『任せろ!』『侑志の頼みなら仕方ねぇな!』と言ったセリフがクラスメイトから飛ぶ。
おまえらが侑志の何を知ってるっていうんだよ、と腹が立ち、正直に言ってしまえば橘のスマホ捜索にも協力はしたくないが、今は波風を立てないようこの場の流れに身を任せておこう。
橘スマホケースは薄ピンク色一色の鮮やかなケースらしいので、その情報を手掛かりに探すしかない。
そうしてクラスメイト全員が教室内のスマホを探し始めた。
「よっ。明里ちゃんのスマホ盗ったのは君かね」
「何ナチュラルに話しかけてきてるんだよ」
「いやーこのトラブルに乗じれば目立たずに話せるかと」
こんなトラブルの中で声をかけてくる新那に呆れながらも、少しだけ口角が上がったのは内緒である。
「そんなことよりちゃんとスマホ探せよ」
「今一緒に探してるじゃんみんなのカバンしまってあるとこ」
「口を動かすより手を動かせって話だよ。まあ仮に手を動かしたとて、こんなところで橘スマホは見つからないだろうけどな--」
俺たちが探しているのは、教室の後方にある棚の中に置かれたスクールバッグ付近。
俺たちが通う高校では、スカーバッグは机の横にはかけず、教室後方に置く場所がある。
まさかこんなところにスマホを隠すやつなんていないだろう。
そう思っていたのだが……。
「……やっべ。見つけちまったんだが?」
「え、嘘。どこ?」
「……侑志のカバンの上」
「……え?」
この状況、クラスメイトにどう報告するべきだろうか。
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