第41話 意外な繋がり



俺はそれから、回復するまで療養することになった。


担当は桝田ますだ誠一せいいちさん。俺が最初に言った病院の院長さんだったと思ったけど、どうやら桝田さんのお父さんが医院長の病院だったらしく、桝田さんのお父さんが怪我で一時期いなかったときに、この病院で勤務していた桝田さんが、代理で医院長をやっていたらしい。


それで、桝田さんのお父さんが戻ったタイミングで俺がこの病院に来たということだ、面白いこともあるもんだな。



そして、桝田さんにカウンセリングを受ける前に、どうやら俺のところに一人来客が来てるらしい。


「来客って名前分かりますか?」


俺は桝田さんに聞く。


「ああ、九島くしまさんって言うらしいですよ。」


「ああ!」


なるほど、九島さんってことは多分、芹音せりねちゃんか。


芹音ちゃんと契約の手続きするとか言っておきながら二日も俺が寝てたから、芹音ちゃんにも迷惑をかけたな…。


ちゃんと謝っておかないと…。


「じゃあ、私は行きますので、お話が終わったらまた呼んでください。」


桝田さんがそう言い、病室の扉を開ける。

そうか、来客だから俺と芹音ちゃんだけの環境を作ってくれたんだな。


「あ、はい。ありがとうございます。」


俺はお礼を言う。





…数分くらい経って、





コンコンッ


病室の扉が叩かれる。


来たかな。


「はーいどうぞー。」


俺が呼びかけると、扉がスライドされる。

そこには、制服姿の芹音ちゃんが立っていた。


そうか、時間的に夕方だと、学校帰りかな。


「駿作さん!」


芹音ちゃんが、俺のベッドへとことこと走ってくる。


「ああ、やっぱ芹音ちゃんだったか。」


「星奈お姉さんから聞いた時は本当に驚いたんですからね、もうほんと心配しましたよ?」


「うっ、ごめん。」


芹音ちゃんに俺は頭を下げた。


「でも、元気そうでよかったです。」


「うん、おかげさまで。」


芹音ちゃんも、みんなと同じくらい俺のことを心配してくれてたんだな。

まだあって日が浅いのに…、うれしい。



「こら芹音、元気でも病人なんだから。」


そこで、どこかで聞いたような女性の声が、芹音ちゃんの後ろで聞こえた。


芹音ちゃんの後ろに視線を移すと、


「…?」


どこかでみた男性と女性が立っていた。


「えーと、黒井さんでしたか、あれから容体がよくなったようで、よかったです。」


男性が俺に話しかけてくる。


「………ああ!!」


思い出した。あの時、『FOODBAL』のあるビルの前で、俺に話しかけてくれた男性と女性だ。


でもなんでここにいるんだ?


「もう、お父さんのほうこそ急に話しかけてもわからないでしょ?」


「え、ああ、そうか…。すみません黒井さん…。」


「お、おとう…さん?」


え?今芹音ちゃん、この男性のことお父さんって呼んだよな…?


「すみません駿作さん、この二人は私の両親です。」


…。


「あ、え、そうなの?!」


一瞬頭が追い付かなかった。


なるほど、それでここにいるのか。






「改めて、芹音の父の、九島 賢太郎けんたろうです。」


「芹音の母の、九島 利穂りほです。」


「あ、ご丁寧にどうも、オームロ工房の黒井駿作です。」


声をかけてくれた男性と女性改め、九島さん夫婦に丁寧に自己紹介されて、俺もやらねばと自己紹介しておく。


そして、


「えっと、あの時は、ありがとうございました。」


俺は九島さん夫婦に頭を下げる。


「いえいえ、結局私たちは何もできませんでしたし。」


「そうですよ、困ったときはお互い様です。」


それに対して、九島さん夫婦はそういう。


「そ、そんな、俺は声をかけてくださったのに、無視をしてしまいましたし…。」


そうだ。俺は差し伸べてくれたこの二人の手を振り払ってしまったし。


普通、こんなよくわからない死にかけに声をかけるだけでもすごいことだと思うんだけど…。



「なるほど、芹音の言っていた通り、とてもお優しい方なんでしょうねぇ。」


そんな俺の言葉に、利穂さんがほほ笑む。


「はぇ?」


俺は変な声を出してしまった。



何でみんな俺のこと優しいって言うんだろうか…?









「それでですね、駿作さん。」


「うん。」


気を取りなおして、芹音ちゃんの話を聞く。


「天摩さんに頼まれたんですけど、駿作さん動けないから、なんなら病院で手続き進めちゃってくれって言ってました。」


「え?あ、そうなの。」


まあ、その方がいいか。

でも天摩のやつ、俺の気にしてたことを何も言わなくても持ってきてくれるところは流石だな。


「あ、えっと、ハンコとかもあるかな?」


「ありますよ。」


…流石だ天摩。



「じゃあ、この紙に項目に従って書いて…って言おうと思ったけど、もう書いてあるのね…。」


「あ、はい。すみません先に書いちゃって。」


「いや、いいよ。この方が早くていいしね。」


俺の周り、優秀な人が多いな。


俺は芹音ちゃんの書いた契約書を読む。


…うん、しっかり書いてあるな。しかも字がすごくきれいだ。



「…うん、これでいいよ。契約成立ってことで、明日からよろしくね。」


俺は、契約書を封筒に戻す。


「はい!頑張ります。」


俺と芹音ちゃんは握手する。



今後は、芹音ちゃんのやりたいこともしっかり考えていかないとな。






「今日はありがとうございました。」


「こちらこそ。」


俺と芹音ちゃんたちは挨拶を交わし、芹音ちゃんたちは病室を後にする。



皆のためにも、少しでも早く回復しないとな。




次は、俺が治していく番だ。













\*よければ作品に、レビューといいねをお願いします!*/



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る