第27話 星奈VS美里
「
そうか、星奈さん行けたら来るって言ってたもんな…。
男どもの口約束「行けたら行く」よりずっと
星奈さんは真っすぐこっちに歩いてくる。
「
「え、えっ~と……。」
まずい、言い訳というかどう説明したらいいのか。
久々に出会って抱き着かれました!はなんかおかしい気もするし…。
「正直に答えてくださいね…??」
うおっ、顔怖…!
星奈さんは絶対に怒らせちゃいけない人だった…。
…仕方ない…。
「す、すみません、俺とこの
「ふ~ん。」
星奈さんが腕を組んで、少し沈黙が続いたかと思うと、
「そんなに仲がいいのに苗字呼びなんですね~。
「あっ」
そうだ、そうだよな?!
星奈さんとはお互い名前呼びをするってことになったし、
うわ~余計まずい方向に…。
「あの、さっきから聞いていれば
ちょっと佐畑さん?!
「あ、これはこれは自己紹介が遅れましたね。私は駿作さんのパートナーの
「えっ?!」
星奈さぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!
確かに仕事上専属でサポートに回るからパートナーではあるけど、この流れだと誤解を生んじゃうってぇ!!
「ぱ、パートナー??」
佐畑さんが俺の方を見る。いや顔怖…!
「い、いや、仕事上のパートナーって意味ですよ!はい!!」
なぜか敬語になってしまう。
「あらそう、でも、黒井くんとやけに親しげってことはそれ以外で何か関係があるんだよね?」
「うっ…」
なんて説明すれば…。
「私と駿作さんは、毎日一緒にゲームして一緒にご飯を食べて、同じ部屋で過ごしたりしてますよ。」
「…はい?!」
星奈さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!
間違ってないけどその言い方はまずいって!
星奈さんの言葉に目を丸くする佐畑さん。
「ちょっと黒井くんでどういうこと?クビにされたと思ったら年端も行かない女の子をはべらせてたの??」
「え?!い、いや!違うよ!……わあああちょっと待って!ちゃんと説明しますから!」
佐畑さんの眉間にどんどんしわが寄っていく。
そりゃクビになって落ち込んでた彼女なし男が、女の子と親しげだったら不思議ですもんねー?!
「最近は私の手料理を食べてくれますし、眠くなるまで一緒にゲームして…。」
「あ?」
星奈さん、これ以上爆弾投下しないで(泣)
最近星奈さんといろいろやるようになったけど、よくよく見たら女性の家に何度も上がり込んだりしてるのはおかしいよな?!
ついつい星奈さんの誘いにのってしまったが、もうちょっと控えるべきだったか…。
「…黒井くん。」
「はい!」
佐畑さんが俺を呼ぶ。
「この女性の方と何をしていたのかは、プライベートだから詳しくは聞かないけど、心配している人がいるのにそれを気にせず他の女性と遊ぶのはちょっと傷つくかな。」
「ごもっともです…すみません…。」
それは俺が1000悪い…。
「あと、私のことも名前で呼んでね、私も、駿作くんって呼ぶから。」
「あ、うん。じゃあ俺も
そうだな、距離感をなくそう!
「さん付けじゃなくて美里でいいよ。」
「み、美里…」
慣れない…。
「うんうん、じゃあこの件は終わりでいいよ。」
お、いつものさ…美里だ。
よかっ…
「でもね…。」
「…?」
「私の手料理も食べて欲しいかな!」
み、美里の手料理…か。
「…いいのか?」
「私がいいって言ってるからいいの。」
「あ、なら、ぜひ。」
「決まりね。」
…なんか、女性二人の手料理がタダで食べられるのは得だなぁ…。
……あ!こういう考えだから変に疑われるんだ…!気を付けよう…。
「ちょっと待ってください!」
すると星奈さんが待ったをかける。
「なぁに?星奈ちゃん。」
目が笑ってない美里が星奈さんに答える。
「わ、私も作りたいので、これからは毎朝私が朝ご飯を作ります!」
「ま、毎朝?!」
毎朝星奈さん料理?!
「星奈ちゃん、それはちょっと欲張りじゃなぁい?」
「美里さんは駿作さんと仲良いんですよねぇ?じゃあ付き合いの短い私に譲ってくださいよ~。」
な、なんだ?星奈さんと美里が明らかにバチってる…。
なんか二人の目から火花が出てる気がする、幻覚…?
「まあがんばれよ、駿作。」
「え」
天摩は俺の肩を軽くポンポンと叩くと、自分のデスクに戻って作業を始めてしまった。
「じゃあ、私と星奈ちゃんで料理対決をして、美味しいって言ってもらえた方が朝ご飯を作るっていうのはどう?」
「いいですね、受けて立ちますよ。」
星奈さんと美里が何かをこそこそと喋っている。
…なんかダメ人間に戻される予感がする。なんとなくだけど。
「おーい。ひと段落付いたら駿作にも佐畑にも頼みたいことあるから早く終わらせてくれよ~。初日とはいえ仕事はあるんだからな~?」
天摩がそういうので、俺は自分のデスクに戻るとする。
美里は…、まだ星奈さんと密会だな…。
俺は気を紛らわすように手元の資料に目を通しながら、パソコンを起動する。
こうしてオープニングセレモニーもなにもないまま、『オームロ工房』の営業がスタートしたのだった。
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