第25話 再始動の前夜



「うあぁ…ついに明日か…。」


俺は風呂から出て、PCデスクの前に座る。



明日はとうとう天摩の会社の始業日だ。


そして俺の新しい会社の入社日でもある。


あっという間だったなぁ、天摩に始業まで二週間後だと言われてから、もうそんなに経ったのか。


ほんと、一か月でいろいろ変わったものだ…。



ちなみに今日は、夜になるのが待ち遠しかった。



俺はパソコンで『Biscord』を開く。


「あ、きてる。」


「月☆」と書かれたユーザーから着信が来ていた。


そう、このユーザーは星奈さんだ。


以前星奈さんに、これからいろいろ必要になったりとかするかも、ということで『Biscord』を始めてもらった。


俺は着信に応答した。


「あ、駿作さん!来ましたね!」


星奈さんの声がする。


「すみません、少し遅れました。」


「大丈夫ですよ~」


…俺たちは今から『Vショット』をする。いつもは午前中にやるのだが、今日はこんな夜の時間から始めることになった。


最近なかなか忙しくてできていなかったから、久しぶりにできるということでお互いわくわくしていた。


ちなみに最初は星奈さんに、「私の家に来て二人でやりましょうよ!!」と言われたが、流石による九時から女性の家に二人きりって言うのは、世間体的にもいろいろやばそうな気がして、丁寧に断った。


そこで代わりに、『Biscord』で通話をしようということで落ち着いてもらった。


なぜか少し不満そうな顔をされたが…。

今は機嫌がいいようだ。


「さぁ!さぁ!やりましょう!私もゲーム自体久しぶりで早くやりたくてうずうずしてるんです!!さぁ!早くゲームの電源を入れてください!私はもうルームを作って待ってるので!」


「うぇあ?!え?は、はい、わかりましたから!!分かりましたから落ち着いて!」


星奈さん、相当やりたかったんだな…。


俺は急いで『VVGAMES』を起動して、『Vショット』を開く。


そして、すでに『Biscord』のDMで打ち込まれていたルームIDを入力して、星奈さんの開いているパーティーに入る。


「来ましたねぇ!じゃあはじめます!」


ふつうは入って少し間があるはずなんだが、俺が入った瞬間に画面が暗くなって、ゲームが始まった。


どんだけやりたいんですか!星奈さん!




「星奈さん、ワールドは「都市」らしいですけど、」


「え?!あ、そうですね!えっと、じゃあ西エリアの工業地帯に行きましょう!」


「了解です。」



こうして久しぶりの、星奈さんとの日課だったゲームが始まった。







一戦目の結果は優勝。そして、


星奈さん

kill count 25

Head Shot 22

Receive damage(受けたダメージ)0


kill count 3

Head Shot 1

Receive damage(受けたダメージ)85


となった…。





「どぅえ…??」


どうなってるんだよぉ…。星奈さん、前よりレベルアップしてらぁ…。



「ふふふ、どうです?私はやれなかった間もイメトレでレベルを上げたんですよ。」


「イメトレでそんなあがるもんなんですか…?」


やっぱ星奈さんすごいわ…。




ちなみにその後二回やったが、もちろん星奈さんは二回とも優勝に導いて、キルカウントが衰えることもなく…。


「うう…、また俺足引っ張ってますねぇ…。」


「だからそんなことないですって!大丈夫ですよ!というか私の方こそ狩りすぎちゃってますよね!私の方こそ申し訳ないです!」


「いや、星奈さんは強いから、いいんですよ…。」


星奈さんの強さは半端じゃないんだ。手を抜くとかはしなくていい…。



「じゃあ…私がダウンさせたプレイヤーを倒すとかは…?」


星奈さんがそんなことを聞いてくる。

そ、それは…。


「それはぁ…なんか…うれしくないです…。」


「で、ですよね…。」


お互いが黙ってしまい、沈黙が続く。

毎度楽しみに始めるのに、なんかこういう空気になっちゃうのほんと申し訳ないな…。


「すみません、楽しい雰囲気が毎回こうなっちゃう気がして…。」


「いえ…!私は楽しくゲームができただけでとても楽しいですよ!」


「あ、それなら良かったです…。」


よかった、星奈さんが優しくて…。




ふと時計を見る。


あ、もう23時か…!



「あ、星奈さん!すみませんが、俺明日入社式なんで!そろそろお暇させていただきます!」


「え、あ、すみません!そういえばそうでしたね!私も明日覗きに行けたら覗きに行きます!」


「わかりました!ありがとうございます。ではおやすみなさい。」


「おやすみなさい!」



星奈さんとの『Biscord』の通話を終える。



「さて、早く寝なきゃな…明日から新しい仕事のスタートだ。」


俺は照明を消してすぐにベッドに潜る。


最近は生活リズムを整えようと頑張ってたから、すぐ眠くなってきた。










*










「うーん、どうやって駿作さんと最後まで楽しくゲーム出来るのかな…。」


私は悩んでいた。

駿作さんとやるゲームで、どうやったら会話だけじゃなくて、最後までお互いの背中を預けながらいいプレイができるか…。


わざわざ私が手を抜くのは違うし、かと言って私が教えるのも、偉そうにしている感じがしてやめた方がいい気がする…。


ん…?でも、教える時間は駿作さんと話す口実になるのでは…!!


よし!教えよう!駿作さんを教えよう!!


「よし、そのためには駿作さんとどんな感じでゲームをやるのかを考えなきゃ…!」


最近の私の生活は、駿作さんとどう話すのかとか色々考える時間が増えて、ついつい夜更かししてしまう…。


楽しいからいいけど…。


そして今日も夜更かしすることが決定した。








*















『しゃべったらー』



VVGAMES情報局(非公式)

@vvgames_information_hikousiki

フォロー350 フォロワー98,630



「やばいプレイヤー見つけた。」

動画ファイル

いいね 1.3万 リツイート 880 コメント 153



―――――――返信を表示―――――――


「3連続ヘッショまじか」


「何者?」


「あ、俺この人前見たわ」


「俺も」


「誰?」


「どっかの団体の人なんじゃないの」


「こんな人知らんぞ」






日本のゲームトレンド3位


「VVGAMES」


「Vショット」


「ヘッドショット」






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