第24.5話 両親



天摩と会社の下準備をした二日後…



「花差し替えとかないと…。」


俺は二つ隣の市、俺の故郷にある墓地にいる。

そして、今目の前にある墓は、俺の両親の墓だ。


怒涛の出来事続きの後、今日この日は三回忌で、墓参りに来ていた。


俺の両親は二年前に交通事故で亡くなった。自動車同士の多重事故に巻き込まれて、親以外にも、5人くらい死者が出てしまっていた覚えがある。規模が大きくて連日連夜でニュースになったほどだ。


俺が親が亡くなったことを知ったのは、そのニュースで二人の乗っていた車がぐちゃぐちゃになって映っていたのを見たからだったと思う。


当時の俺はショックも大きかったが、それと同時にあの会社で大きなミスをして間もないのもあって、自分で失敗を取り戻さなければと躍起やっきになっていた。

そのせいで、悲しんでいる暇なんてなかった。


でもおかげで、その大きなショックをずるずると引きずることはなかった。

あの時は良くも悪くも、会社に、仕事にのめりこんでいたんだと思う。



あれだけブラックな会社だったが、それでも年に数回は墓参りに行っていて、そのたびに経過報告をすることにしている。



そして、今日。


墓を水で軽く洗って、枯れた花を差し替える。そして線香に火をつけて、刺した。



今日はめちゃくちゃ話すことが多い。まあ、ここ一か月で、本当にすごい出来事の連続だったからなぁ。



「父さん、母さん。今回はすごい出来事ばかりだったよ。」



俺はその出来事をラジオで話す感覚で面白おかしくしながら話してみた。


会社をクビになってしまったこと、星奈さんと出会って、一緒にゲームしたこと、天摩と再会したこと、天摩の会社に就職することになったこと。


「とても一か月の間に起こったとは思えない内容でさ、つい盛り上がっちゃったな。」


当たり前だが誰も何も答えない、ただ線香の煙が揺れるだけ。


それでいい。


俺は学生時代は家族で話すのが好きだったし、どこかで聞いてくれてるだろうっていう気持ちで話したんだ。それもあって毎回少し長く話してしまう。


まあ、傍から見たらずっとひとりで喋ってるから少しだけ辺に見えるかもな。



「よし、話はこれで終わりだ。また来るよ。」


俺は立ち上がって、桶とひしゃくをもって墓地を後にする。



これからまた新しい一歩のスタートだ。





父さん、母さん。どこかで、こんな息子を見守っておいてくれると嬉しいです。

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