第15話 許せない男
俺と
ファミレスの前には、野次馬とそれを止める警察官、パトカーと救急車が止まっていた。
まずいかもなぁ…。
そのままファミレスに入る。
ファミレスの中は、すでにお客さんはいなくなっていて、4,5人の警察官と、警察官と話す店員さん、奥に救急隊員が見えた。
やっぱり大ごとになっているみたいだぁ…。
「巡査長!お連れしました。」
「ああ、ありがとう。」
俺たちを呼び止めた警察官に巡査長と呼ばれた、三十代くらいの警察官がこちらに寄ってくる。
「ええと、あなたがここのファミレスで騒ぎを起こした方で間違いないですか?」
巡査長さんが俺に聞いてきた。
「…はい。」
嘘をついてもしょうがない。正直に話そう。
「詳しくお話をお聞きしてもよろしいですか?そちらの女性の方も。」
「わ、わかりました。」
話を聞いてくれるってことは、少なくとも俺だけに罪が問われることはなさそうだ。
あの男にも罪を問えるならそれでいい。……いかんいかん、なんかいけない奴の考えになってる気がする。
俺と星奈さんはそれぞれ別のパトカーに案内され、警察官と事情を話すことになった。
「ええと、黒井さん。まずは何があったのか一通り教えてください。」
「はい、わかりました。」
俺は、あの男とのやり取りを包み隠さず話した。
一緒にいた星奈さんが、あの男に強引に連れていかれそうになったこと、俺が男に、コップに入った熱湯を顔にかけたこと。そのまま金だけおいてファミレスを出ていったこと…。
「なるほど、その場にいた客と店員の証言とも一致しますね。」
「はい。」
「それで、あなたはあの男性に熱湯をかけてしまったんですよね?」
「うっ…、はい。」
やっぱそこ突かれるよな。
「すみません…、その、星奈さんはとても痛がっていて…、それに力では敵わないと思って、とっさに熱湯をかけるなんていう行為に出てしまいました…。」
俺は真意をしっかり話す。どこかでうそをついて後にばれたらそれはそれで虚偽の罪に問われそうだしな…。
罪に問われるのは構わないけど、少しでも罪は軽くしたい!
最初は星奈さんを救えたんなら牢屋に閉じ込められてもいい!なんて考えてたけど、本物の警察官を前にして、正直怖気づいてますはい。
罰金くらいで済めばいいなぁ……。
「うーん、監視カメラなどを使ってもう少し詳しく見る必要があるんですよね。ですがいまのままだと過剰防衛になってしまうかもしれません。」
「ううっ…、はぁ…そうですよね……。」
「分かりました、これで話は終わりますが。またお呼びする可能性があるので、この紙に名前と電話番号を記入してください。」
「はい、わかりました。」
俺は名前と電話番号を書き、パトカーから外に出た。
「…星奈さんはまだはなしてるのか…。」
俺はとりあえずファミレス前の階段で座って待つことにした。
中には入っちゃいけなさそうだしな。
それから十分くらい経っただろうか。
定期的に出入りする警察官をみていると、
「すみません
星奈さんが戻ってきた。
…少し疲れた顔をしている気がする。
「いえ大丈夫ですよ。俺もさっき事情聴取が終わったばかりです。」
俺は、星奈さんを元気づけるつもりで、少し効果鵜をあげて答えてみた。
「そうですか。……その、駿作さん…、」
ん、まだ顔が暗いな…。
「はい、どうしました?」
すると、星奈さんはうつむいたかと思うと、
「…本当に、すみません……。」
「え、」
俺に頭を下げてきた。
「え、えっと、」
「駿作さんは、私を助けようとして…、何も悪くないのに…こんな…。」
星奈さんはまた泣きそうになっていた。
ああ、なるほど。
本当に優しい人だ。
俺は星奈さんの肩をもって、顔をあげさせた。
「駿作さん…?」
俺は涙目の星奈さんと目を合わせる。
「いいんですよ星奈さん。俺は星奈さんも守れただけで十分です。星奈さんが気にすることは何もないんです。謝られるより助けてくれてありがとうと言ってくれた方が、俺はうれしいですよ。」
「しゅ、駿作さん……、わかりました。」
星奈さんは自分の目をぬぐうと、
「改めまして、助けていただきありがとうございました!」
「はい、どういたしまして。」
うんうん、やっぱり笑顔が一番だ。
「すみません、通してください。」
「え、ああ。」
すると後ろから、ファミレスから出てきた警察官と救急隊員がやってきて、その後ろに…。
「あ、」
「あ…?てめぇ俺に火傷させたクソ陰キャじゃねえかぁ!」
顔の半分が包帯で覆われたあの大柄な男だった。
てか、俺こんなにひどいけがさせちゃったのか…。
自業自得とはいえ流石いやりすぎたな…。
「てめぇ!ぶっ殺してやる!!クソ野郎がぁ!!」
大柄な男は俺を睨んで大声で叫んだ。
「やめろ、暴れるな!」
「こら、早く乗りなさい!」
大柄な男はそのまま救急車に乗せられるようだ。まあ、あの怪我だからすぐには警察署にはいかないか。
「どけぇ!」
「ごぁ?!」
「?!」
その時、大柄な男が自分を抑えていた警察官を蹴り飛ばした。
「きゃぁ?!」
「あっ!」
そして飛ばされた警察官が、星奈さんにぶつかった。星奈さんはそのまま後ろに倒れる。
くっそこいつ…!
「大丈夫ですか?!星奈さん!」
俺は星奈さんに駆け寄る。
「だ、大丈夫で…いっ?!」
「ッ!」
星奈さんは立ち上がろうとして、バランスを崩してしりもちをついた。
「せ、星奈さん…?」
「あ、足が…。」
星奈さんが自分の手で足を抑える。
足をひねったのか…?!
「す、すみません!」
蹴り飛ばされた警察官が星奈さんに謝る。
あの男、絶対許さない…。
「早く乗れ!」
「クソがぁ!」
警察官5人に押されながら、男は救急車に乗せられて、救急車は走って行った。
……俺ってどうなるんだろう…。
あ、違う違う。今は自分のことより星奈さんのケガの方が優先だ。
「星奈さん、足は動かさないようにしてください!」
「え、は、はい。」
今は星奈さんを助けることが第一だ。
「駿作さん…。」
俺は星奈さんの背中を壁に預けて、楽な体制にさせる。
「先ほどはすみませんでした、すぐにもう一台の救急車が来ますので!」
さっきの警察官が俺たちに駆け寄ってくる。
「ああ、ありがとうございます。」
俺は警察官に礼を言う。
そして警察官が立ち去ろうとして、
「ああ、あと黒井さん。」
「…?はい。」
もしかして……。
…。
「先ほどの男の様子を見てよくわかりました。おそらくあなたが過剰防衛で罪に問われることはないと思いますよ。」
「ほっ…。」
ああ、よかったぁ……。
「よ、よかったです!」
星奈さんも喜んでいた。
間もなくして救急車が来て、俺と星奈さんは救急車に乗り込み、病院へ向かう。
毎日ゲームをしていた配信者との初めてのお昼は、ドタバタに終わった。
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