第13話 月城星奈との会話


俺と星奈せいなさんがハンカチの下りで騒いでしまい、誰かの舌打ちが聞こえて二人して恥ずかしくなってうつむいていると。


「おまたせいたしました~」


俺たちの頼んだ料理が運ばれてくる。そこでようやく二人して首をあげた。


「こちらチーズハンバーグセットで~す」


俺のはチーズハンバーグ。うん、美味しそうだ。ハンバーグは結構大きめで、一緒に白米とコーンスープがついてきた。


「こちらビーフステーキセットです」


続いて星奈さんの前にビーフステーキが来る。こっちもうまそうだ。俺と同じく白米と、コンソメスープがついてくる。


「こちらポテトと、」


ポテトバケット大が置かれる。結構量あるな。まあパクパクつまめば終わるか。


「フィッシュバーガーセットです。」


「わっ」


「えっ」


俺と星奈さんは同時に驚く。だってめちゃくちゃでかいんですもん。


長い串に刺さったバーガーは、バンズの下に野菜と魚のフライが交互に置かれている。


…これ食べきるのはきついんじゃないか?


「ごゆっくりどうぞ~」


店員さんが厨房へ戻っていく。



「…噂には聞いてましたがなかなかの大きさですね…。でも頑張って食べます!いただきます!」


星奈さんはそういってから、さっそくバーガーに取り掛かった。


「じゃあ、俺も食べます。いただきます。」


俺も目の前のハンバーグを食べ始める。


うま…。ここのファミレス美味しいって聞いたけど、噂通りの美味しさだな。


俺たちは会話も忘れて数分パクパクと食べていた。


「あ、すみません。食事に夢中になっちゃって…」


「え?いやいや大丈夫ですよ!全部食べ終わってからでも。」


星奈さんの前に置かれていた、あんなにでかかったハンバーガーが、もう半分なくなっている。


「…食べるの早いですね?」


「え?そうですか?」



…星奈さん、この見た目で大早食いなのか…しかも無自覚…すごいな。


星奈さんの面白いところがどんどん見つかる。マジで配信者に向いてると思う。


あ、


「そういえば星奈さんって、この先も『ヨーツベ』以外のSNSはやらないんですか?」


「え、うーんそうですね…。やりたい気持ちはありますけど、SNSとかはほんとに疎くて…。」


そうかぁ…。


「…でも、この機会に始めてもいいかもしれませんね。」


「ん?」


駿作しゅんさくさん!私にSNSのやり方を教えてください!」


「え、俺がですか…?」


「はい!お願いします!」


「……まあ、俺でよければ。」


「わぁ!ありがとうございます!」


せっかく頼ってくれたし、内容も全然できないわけじゃないから…。


やるかぁ。


「じゃあ、まず『しゃべったらー』のやり方から説明しましょうか。」


「はい!」


そう言って俺は、自分服のポケットに手を突っ込んだ。


あれ?スマホが……あ。




「すみません、僕今、スマホ壊れてるんでした…。」


すっかり忘れてましたわぁ…。今俺のスマホは、車に轢かれてバキバキに壊れてペースト状態になってるんだった。


「ああぁ…それは仕方ないですねぇ。じゃあ私のスマホでやり方を教えてください!」


星奈さんはそう言って、自分のカバンからスマホを取り出した。


ライムグリーン色の、うさぎの耳のついた可愛らしいスマホケースだ。


「とりあえずアカウントはあるんですけど…。」


星奈さんが見せてくれ画面には、「つーちゃんねるのツキ」と書かれた、初期アイコンのままのアカウント。フォローフォロワーはもちろんゼロ。


「何をつぶやいたらいいとか分からなくて…。」


星奈さんが少し困った顔をする。困り顔も可愛いな…じゃなくてじゃなくて…。


「あー、基本的に地元の風景の写真とかは身バレするのでやめた方がいいですが、ちょっとした旅行に行ったときに買った、食べ物やお土産なんかをあげるといいかもしれませんね。」


「ああ、なるほどなるほど…。」


「あとは、ゲームで何キルできたとか、自慢がてらスクリーンショットを載せてみるといいかもしれません。」


「『Vショット』とかですか?」


「そうそう、星奈さんめちゃくちゃうまいんですから自信持ってください。」


「そんな、ありがとうございます!」


星奈さんとの会話が弾む。


「あとは、ゲームとかファッションとか色々、『しゃべったらー』にはそういうコンテンツがありまして。」


「はい。」


「そのコンテンツに合ったハッシュタグを使ってつぶやけば、沢山の人に見てもらえると思いますよ。」


「ハッシュタグ!聞いたことあります!」


「『Vショット』なら、「#Vショット」とかもありますし、『しゃべったらー』をやっている『Vショット』ユーザーとかが見てくれると思います。」


「…それって宣伝にもなりますね!」


「はい、結構効果あると思います。」


そうして、俺たちは食事を楽しみつつ、SNSの活用方法の話で盛り上がった。



「…すご、本当に食べ終わっちゃった。」


星奈さんは俺と話している間にもパクパクと食事を口に運んでいて、俺がハンバーグを食べ終えたすぐ後に、頼んだ三品を完食した。早すぎる。


ポテトは許可を取って、俺も数本つまんだけど誤差だし。



「結構食べる私でもさすがにちょっときつかったです。でも、美味しかったぁ」


星奈さんがお腹をさする。


「それはよかったです、…少し休憩しますか?」


ちょっと星奈さんきつそうだしな。


「はい、お願いします。ついでにお手洗いにも行ってきますね。」


「分かりました。」


星奈さんがお手洗いに行っている間、俺は机の上の食器を一つにまとめた。


「よし。」


そうして俺がふたたび席に腰を付けたとき、



「ちょっと、離してください!」



「?!」



トイレの方から星奈さんの大きな声が聞こえた。





俺はとっさに立ち上がって、トイレの方に向かった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る