第3話 抱えた苦しみ


「…ん?」


気づけば外が真っ暗だった。


ああ、そういえば、不運が続いてふて寝したんだったっけか…。

時計を見ると、時間は21時過ぎ。帰ってきたのが15時くらいだから、ざっと6時間くらい寝てたのか。


「…腹減った。」


とりあえず何か食べたい。いつもは自炊するが、残念ながら今の俺はあまり動きたくない。ということで、たまに食べるように買っているカップ焼きそばを持ってきた。

お湯を沸かして、かやくを入れた麺に注ぐ。三分待ってから、湯を切って、ソースをかける。スパイスは…、辛いのが苦手だから使わない。


箸を持ってきて、手を合わせ、焼きそばをすすった。


「うまい…。」


たまに食べるからこそのおいしさ。こういう時に飯を食べるとなんだか落ち着くんだよな。


腹が減っていたからすぐに完食してしまった。


「はー、とりあえず風呂も入るかぁ。」


スーツのまま寝てしまったから、汗でべたべただった。とりあえず風呂が沸くまで歯を磨くことにした。


いつもは時間がなくてシャワーばっかりだが、今日はいろいろありすぎた。ゆっくり湯船につかりたい。


風呂が沸いた。服を脱いで、風呂に入り、体を洗う。


豪快に洗った。全部今日のことを洗い落とすつもりで。

誰が作ったのかは知らないが、水に流すとはよく言ったものだ。俺のよどんだもある程度きれいになった気がする。


さっぱりしたので、そのまま湯せんに浸かる。


「はぁぁああ…」


おもわず口から大きく息を吐いた。


あー、最高だな、風呂。どうせなら入浴剤も入れればよかったかなぁ?買ったことないけど…。


「ふぅ…」


そこからじっくり20分。湯舟に浸かり続けた。



「さて、これからどうするかなぁ…。」


スウェットに着替えて髪を乾かした後、ベッドに腰を掛け、腕を組む。


風呂から出て、少しさっぱりした俺は、今後について考えることにした。


まずお金、これは3年間働いてきて使う時間もなかったから十分貯金がある。すぐに働く先を探さなくても大丈夫。

次にスマホ。


俺はテーブルの上にある、無残な姿となってしまったスマホを見る。


うーん、これが一番の問題だ。これデータの復元できるのか?データの復元ができないと困るぞ。ゲームのデータはもちろん、電子マネーや数少ない友人や知り合いの連絡先、5年分の写真。今すぐにないと困るものではないが、正直戻ってきてほしい。


「明日は…金曜か。」


俺はベッドから立ち上がって、自分のデスクに向かう。棚からもらったパンフレットを取り出して、裏面を見た。


「金曜日は…やってるな。」


うん…。とりあえず出しには行けそうだ。


あとは再就職先…。


「ううっ…。」


思い出して、少し気持ち悪くなった。


…俺、自分が思ってた以上に、無理してたのかなぁ…。



仕事について考えるのはやめよう。ただでさえ癒えきっていない体が心が、また沈む。


とりあえず、明日の朝まで寝ることにしよう。ゲームのログインは…。いいや、スマホゲームができない以上、連続ログインボーナスが途切れるし、仕方ない。


照明を消して、ベッドに入る。


ふて寝してしまったから、眠りにつけるかなぁ…。















「お前がやったんだろ黒井!」


「クライさーん、自分のやったこと認めてくださいよぉ~」


権藤ごんどう部長と鳥田とりたが口々にそういう。


「俺はやっていません。」


俺は無意味と分かっていても否定する。


「自分のミスを認めたらどうなの、黒井君。」


「え、佐畑さはた…さん…。」


佐畑さんまで、俺のせいだって言いたいのか…?


「そうですよ黒井さん!自分のミスを認めないなんて最低ですよ!」


「黒井!見損なったぞ!」


「え、え…」


他の後輩社員や先輩まで、俺を否定した。


部署内にいる全員が口をそろえて、ミスを認めろ、ミスを認めろと言って来る…。


「や、やめて、やめてください…、やめてくださいぃ…。」














「ハッ、はぁはぁはぁ…。」


見慣れた天井。よかった、夢かぁ…。


凄い汗をかいてるし、のども乾いた。水飲むか…。


そう思って立ち上がろうとして、


「うっ?!」


突然腹から何かが逆流するような感覚。まずい、急いでトイレに駆け込む。


「うっ、おええぇぇぇぇぇ…。」


吐いてしまった。…なんでだ?


その途端、猛烈な頭痛。視界がぐらぐらと揺れるような感じ、頭が重い。


「ぐっ、くそぉ」


口を拭いて、トイレを流し、這うようにベッドに向かった。そのままベッドに入って眠りにつこうとする。


頭がガンガン痛い。なんなんだこれ…。


だめだ寝れない。


頭痛薬を飲もう。確か机の棚の中にあったはず。重い頭を無理やり動かしながら、薬を取りに行く。…よかったあった。薬を水で流し、急いでベッドへ戻る。立っているよりは幾分かマシだ。そのままじっとしていることにした。


どれくらい経ったか、頭痛が少しずつ引いてきた。


よかった、これでようやく寝れる。



俺は寝るぞ、という気持ちで目を閉じた。

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