薔薇たちの恋愛がクロスする。

 まず第一に、この小説は浮気や不倫といった内容を含んでおらず、いわゆるドロドロした昼ドラのような展開ではない、ということを示しておきたい。
 あらすじからして婚約破棄ものの恋愛小説であることは分かるけど、正直どんな内容なの? という疑問を解決すべく、かなりネタバレを含んだレビューとさせていただく。もちろん、このレビューを読んだ後に本編を読めば、より楽しみ易くなることを願って執筆している。

 まず冒頭から緻密な描写で世界観が表現されるわけだが、主人公の「ロザリー」と「ジェイデン」を覚えておけばいい。この2人と交際相手の名前さえ覚えておけばなんとかなる。ふわふわな理解のままハッピーエンドにたどり着き、嬉々としてレビューを書いている私が保証しよう。

 この小説の魅力として、非常に丁寧な心理描写と皮肉や含みが散りばめられたキャラクター同士の掛け合いがある。海外のドラマとか小説などにあるような、素直じゃないやり取りが多々見られるわけだ。
 これが好みな人はそのまま楽しめるだろうが、あまり馴染みがない方だと「結局何が言いたいんだこの人ら?」と思うことがあるかもしれない。もしそうだったとしても、じっくり何が言いたいのかを考えてみるのも案外楽しいものなのて、じっくり読み進めてみるのもオススメだ。結構簡単なことを回りくどく言っているだけかもしれない。

 実際私も最初は戸惑ったが、純情なヒロイン、そしてヒーローが現れてからは、皮肉屋2人の態度が露骨に変わる。これがまた面白く、恋愛というものの魔力を感じさせる。この辺りになってきて、私たちは気付くわけだ。この主人公たち、「何が何でも恋愛を成就させたい」だけなんじゃないかと。もしそう感じたなら、この小説の世界に浸ることができてきたのかもしれない。

 とっかかりは難しく、描写も緻密なため読むのにかなり体力を使う小説ではあるが、それだけあって終盤のカタルシスは凄まじいものだ。
 甘い恋、という言葉を体現したような、幸せなハッピーエンドが待っている。たとえその結末を知っていても、そこに至るまでの物語は楽しめること間違いないだろう。
 交差する恋愛模様を楽しんでいただければ幸いだ。