第191話  昨日の敵は今日の何?

連合軍の本陣にある一行が到着した。


徳川家康との二度目の会談を終えた久武親信ら、そして別の集団が共に現れた。


「只今戻りまして御座います。」

久武が緒将に帰陣の挨拶を終え、後ろに控える者達の紹介を始める。


「皆様方……、こちらの方々は徳川様の懐刀であられる服部半蔵殿の御一行に御座います。」



「おおっ……!」

一同から少し驚きをもって迎えられた一行。



「……徳川家康が家臣、服部半蔵に御座いますっ!此度の我が殿との同盟の受け入れ……誠に感謝の念に尽きません。この半蔵、織田の内情にも覚えが御座います故……殿より皆様のお力になる様にと命じられて参りました。」



「何と……これは有難い!服部殿の御活躍ぶりは身を持って知って居りまする……。心強い事じゃ……。」

「あ……いや、決してこれは嫌味などでは御座らぬ……誤解の無きように……。」

軽く頭を下げる盛山。



つい先日まで激しい戦をした者同士であったが、この戦国に在っては昨日の敵は今日の友という言葉が当たり前に現実として頻繁に起こる事であった。


……もちろんその逆も然りなのだが。



「お気遣い感謝致します。我が殿はこの日ノ本の平和を望んでおられます。しかしながらやはり織田の力や影響力は絶大……、皆さまと志が同じであると久武殿からお聞きした時、殿にとって僥倖であったに違いありませぬっ!此度の同盟の受け入れに再度感謝致すと共に、改めて織田討伐にご協力致す事をお約束致しますっ!!」

半蔵は改めて恭順と感謝を表明した。



そして続いて久武が何か策を講じている様な口ぶりで進言した。

「つきましては、服部殿を早速陣容に加えて頂きたく存じます……。」




「ふむ……それはもちろんこちらとしても有難い事じゃが、何か考えがあると?」

島津歳久が久武に問う。



「はっ……服部殿らは大筒の扱いにも精通している上に安土の城の内部まで熟知しておりまする。」

「徳川殿の大筒部隊の練兵にも服部殿らが関わったとの事。それらを踏まえ、大筒の使用を任せてはいかがと……。」


この久武の案に少しの間、静寂が流れた。

大筒の存在はこの連合軍はもとより、戦全体の行く末を大きく左右する力を持っている。その大筒をつい今しがた味方となったばかりの者に任せるというかなり大胆な提案には、さすがに躊躇せざるを得なかったのである。



ここで一度休憩を挟む事となった。




果たして大筒の行方は……。

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