第189話 初顔合わせ
家康の処遇……。
いや、処遇というものとは違う。
浜松城に陣取る徳川家康に対して攻城戦を仕掛ける前に、ダメ元で送った降伏を促す使者。
長宗我部元親の家臣であり、現在は関東の連合軍の総大将である盛山に仕えている久武親信が派遣された。
単身で浜松城に乗り込み交渉を行った久武。
死をも覚悟しながら会見に臨んだが、そこで驚愕の事実が発覚する。
徳川家康は織田信長を討とうとしている。
この事実を自軍に持ち帰った久武は軍議の中心にいた。
そして彼の話を聞いた皆が最終的には総大将の盛山に決断を委ねた。
「我らは盛山殿の決断を尊重致す!」
「おうっ!」
「同じくっ!」
皆の思いを自身が決断する。
盛山は大きな責任を感じていたが、これまでの戦や軍議で仲間の緒将との絆が強固になっている事を感じており、迷いはなくなった。
「では我らの最終決定をお伝え致すっ!!」
皆が総大将の決断を待った。
「我らは徳川家康と同盟を結ぶっ!」
「そして織田信長を共に討つ!!」
「御意っ!!!」
「ははっ!!」
「おぉぉっ!!!」
ここに連合軍のこれからが大きく変わる事が決定された。
「では今一度、私が浜松城に出向き詳細を詰めて参りますっ!」
久武親信が自身の功を誰にも渡さぬとばかりに早速動き出した。
「頼んだぞ久武!」
「ははっっ!お任せをっ!」
◇◇◇
浜松城では既に新たな動きが始まっていた。
「上様へ報告を……。」
何やら不気味な表情で安土へと伝令を送る家康。
そして更に、
「半蔵を呼べっ。」
これまでも戦や大事が起こる時に、その存在感を現す服部半蔵が家康に呼ばれた。
「殿……お呼びで御座いますか……。」
早速、馳せ参じた半蔵が次の命令を待った。
「うむ……そなたにはこれまでも多大な功を上げて貰うたが……此度も頼みたい事がある……。」
「お主にしか頼めぬ事じゃ……。」
「はっ……!何なりとお申し付けくださいませ。」
半蔵は一切の力をこの主君に捧げる事を心に決めていた。
家康から大事な命を受けた半蔵は直ぐに支度に掛かった。
決行するのはまだである。
それにはある人物の到着が待たれた。
次の日の午後、連合軍から久武親信が再び浜松城に訪れた。
今回は同盟の賓客として丁重に迎え入れられた久武。
自らの家臣を数人連れての訪問だった。
これにはもちろん大きな意味がある。
前回の口約束だけではなく様々な協議の署名が必要であり、それに伴う事務処理や対等な同盟である互いの贈り物の交換の為でもあった。
数刻ほど掛かって書類の交付が終わり、家康は久武に半蔵を引き合わせた。
これにも非常に大きな意味があった……。
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