第188話 リーダーが決めてくれ!
「家康は信長を疎んでおります……。」
久武親信からもたらされたこの情報はにわかには信じがたいものであったが、実際に家康と直に顔を突き合わせて長い時間言葉を交わした者の言葉には、疑念を払拭する強い説得力が存在していた。
「……しかし如何にしてそう感じたのじゃ?」
念の為にそう感じた訳を島津歳久は聞きたがった。
「はっ……家康は最初は信長を『上様』と称していましたが、会談が進むにつれて本音で言葉を発する様になりました。すると、『上様』から『信長』へと呼称が変わりました。」
「更には家臣の前で私に対して、信長を討つつもりである事を赤裸々に語ってくれました。敵である私の前でそれを打ち明けた事に家臣達がかなり驚き、中には口封じの為に私をその場で切り捨てようとする者すら居ました。」
「……そしてそれを家康が自ら制したのです。」
その話を聞くと皆が揃って驚いた。
「なんと……!?」
「その様な事が……。」
「信長と家康と言えば、義兄弟にも例えられる程に強い絆で結ばれておるものとすら思っておったが……。」
盛山が驚きの反応を見せた。
「そして、家康は信長討伐に対して絶対の自信をみせておりました。」
「ほぉ…何か大きな策がある様じゃな。」
立花宗茂がその策を聞きたがった。
「それが……家康の答えは……。」
皆が注目する。
「全く策は無いとの事でした。」
「な、何っっ!!奴はふざけておるのか!?」
憤慨する島津歳久。
「全くじゃ!やはり我らをおちょくっておるのではないか……!」
吉川元春もこれに続いた。
「いえいえ……、あ、いや私もその時は一瞬だけ皆さまと同じ感情を覚えました。」
「……ですが、その言葉を聞いた直後の家康の表情は決してふざけておる者の顔ではありませんでした。
「そして心から自信を持っておる事も分かりました。」
「うまく御説明する事が出来ませんが、実際に私は家康の底知れぬ何かを感じた事は事実で御座います。」
「……それらを踏まえた上で、信長討伐には家康の存在が必要だと感じた次第で御座います……。」
全く澱みなく語る久武の目には自信が漲っていた。
「皆さまはどうお考えか?」
盛山が一同に問いかけた。
「儂は家康など居らずとも信長を討てると感じてはいるが、確かにここで家康の兵を二心なく取り込める事は大きな力となるであろうよ。」
これは島津歳久の意見。
更には吉川元春も、
「私も無駄な恨みは買うべきではないと思いまする。」
「私も同じく……。家康がおれば信長への揺さぶりにもなるでしょう。」
立花宗茂がもう一つの利点を付け加えたのだった。
最期は総大将である盛山に委ねられた……。
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