第187話  おかえり!


「徳川様……、今一度お尋ね申します。どうしても我らには降っていただけませぬか……?


久武はこの問いを、その文面のままで伝えている訳では無かった。



「ほほほ……、久武殿。さっきも申した通りじゃ。徳川は誰にも降らぬ。」


「それと、上様……いや、信長は儂が討つ。」


「このまま大将に伝えるがよい。」




久武親信は何かを深く考えた後、家康に言葉を返した。


「×××××××××××××××××××××××。」






◇◇◇






「只今戻りまして御座います。」

浜松城より戻った久武親信は盛山や連合軍緒将の元に報告に訪れた。


「よく戻った!先ずは無事で何よりとういうものっ!」

盛山が労いの言葉を掛ける。



そして早速、家康との会談の詳細を聞きたがった。

「如何であった?家康は?」



「はっ……、正に掴みどころのない男で御座いました。」

「ですがやはり大筒は恐ろしい様で……。」



「んっ!ではもしやっ!?」

一同が身を乗り出して続きを聞きたがった。



「ははっ!降伏に応じましたっ!!」



「何とっっ!!まさかっ!!家康が降伏とは!」


「にわかに信じ難い……、何か要求が……?」


次々に問いかけが久武に投げかけられる。



「はい……自身と本田正信の首と引き換えに、家臣と領民の助命を条件に降伏に応じるとの事です。」

「その後は信長討伐の為に兵をお使い下されとの事に御座います。」


「まことか……!これは僥倖っ!!」


「早速この条件にて返答を致しましょうや!」

島津歳久が意気揚々と声を大にする。


「私も同感で御座るっ!家康の気が変わる前に事を進めるべきかと……!」

立花宗茂が賛同する。


と、ここで久武親信が思わぬ言葉を口にする。

「お待ち下され……。私は家康と直接対峙して感じた事が御座います……。」



「うむ…それでどう感じた?」

吉川元春が問う。


「私の感覚ですが……、家康は信長を討つ為に使えるのではないかと。」

「……更には家康は戦が嫌いの様です。これは間違いないと思われまする。」


「家康の家臣達は心から主君を慕っております。もしここで首を獲れば彼らの恨みを買うは必然!ですが逆に助命すれば、それこそ命を投げうって我らに貢献するのではないかと……。」



「確かに……家康の家臣団の結束は日ノ本中に響き渡るほど……。」


「じゃが、家康が信長討伐に協力だろうか……?」

盛山が疑問を投げかけた。



「それについては間違いなく協力するでしょう。」


「その根拠は……?」

島津歳久がじっと久武親信を見つめながら尋ねる。





「家康は信長を疎んでおります……。」


このまさかの答えに皆が驚いていた。

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