第178話 脅し
大筒の周りを足軽が囲みながら連合軍が再び進軍を開始……。
対する徳川軍は、ジリジリと後退を余儀なくされていた。
「ぐっ……!下がるのじゃっ!」
「距離を取れぇぇっ!」
「奴らめっやはり大筒で来るかっ!」
「しかしっ!このまま下がり続けては城まで押される事になるぞっ……!」
未だに大筒への対策が確立出来ていない徳川軍は窮地に立たされていた。
◇◇◇
「放てぇぇっ!!」
「どんっっ!」
一発の大筒が放たれた。
浜松城の攻略の為に温存される筈だった大筒。
これは盛山の案だった。
昨日の軍議の終盤……。
「大筒の件にごさるが……。」
「盛山殿?いかがなされた?」
島津歳久が訪ねる。
「浜松城の攻略には大筒が必須な事はもちろん承知しておりまする。」
「……その上での相談なのですが。」
皆が盛山の発言に耳を傾けていた。
「ここで徳川軍を一気に叩けば、浜松城攻城も容易くなるのではと……。」
「ふむ……、つまり……?」
吉川元春が話の続きを促す。
「攻城の為の大筒は必要ですが、目の前の徳川軍に何発か打ち込んでやれば更に徳川兵を一気に減らす事が出来るのではないかと。城への砲撃は脅しに使う程度で良いかとも思うのです……。」
「城の兵は三千程度。一気に攻城する事も可能でしょうが……。しかしそれでは両者に多くの被害が出まする。出来るだけ少ない大筒での脅しのみで家康を降伏をさせる事で城を再利用する事すら容易く出来る様になります……。」
「……なるほど。確かに……。」
立花宗茂が感心する様に頷いていた。
「では……攻城の際の大筒は如何ほどあればよろしいでしょう?」
「私は三発もあれば十分ではないかと思います。」
盛山は自信あり気に答えた。
「三発……本当にそれだけで……?」
島津歳久が不思議そうに尋ねる。
「はい……。一発目で威嚇を。二発目で警告を。そして三発目で家康の心を折る事が出来るでしょう。」
皆が盛山のこの意見に無言で頷き、賛同を得たのはすぐ後の事だった。
そして戦本番。
「どおおんんっっ!!」
この戦いが始まって二発目の轟音が鳴り響いた。
「うわぁぁぁっっ!!」
「逃げろぉぉっ!!」
「馬鹿者っっ!隊列を乱すなぁぁ!」
やはり徳川軍は大混乱に陥っていた。
すでに脱走兵が出始めている。
「殿っ!!このままではっ!!」
「分かっておるっ!落ち着くのじゃっ!」
総大将である榊原康政は頭を悩ませていた。
そしてその目線の先には煙を上げる大筒が映っていた。
大筒を何とかしなければ徳川軍は壊滅する……。
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