第174話  賽銭…いや、再戦!

「島津歳久か……。さすがは島津四兄弟にあっても切れ者と言われた男。」


「あの場面でよく大胆な救援策に動いたものじゃ……。」


本陣の榊原康政が感心していた。

「じゃが、これで少しは敵の兵も減らす事が出来た。我らはほぼ無傷での一時退却……。

「このまま忠勝の好きな様にやらせる事に致そう……。」


前線の策は本田忠勝に一任される事となった。



伝令からその事を聞かされた忠勝は少しにやけていた。

「……さすがは榊原殿、儂の性格を分かってくれておるわ……。」

「…ではその期待に応えねばならぬのぅ。」




「よいか…明朝一気に仕掛ける!ぬかるでないぞっ!」



「ははっ!!」


家臣に命を下した忠勝は、明日を心待ちにしながら酒を飲み早めに体を休めた。














いざ決戦の早朝。再び対峙する両軍。


昨日とは明らかに徳川軍の様子は違っていた。

最前線に本田忠勝が顔を見せていたのだ。



それをみた吉川元春と島津歳久が顔を見合わせる。

「何という大胆な……!」


「儂らが本田忠勝の顔を見ただけで臆すると思うておるのじゃろう……。」


「まぁ実際にそうなる者も大勢居る筈……。」


「……あれを目の当たりにすれば、それも仕方がない事。」





「……しかしこれは好都合……。」

何かを含んだ笑みを浮かべる吉川元春。


「儂らは奴を出来るだけ目立つ場所に引きずり出すだけじゃ……。」

同じ様な表情で言葉を発したのは島津歳久であった。





「自然に…自然に……。」


「むやみな挑発はかえって奴を勘繰らせる……。」


「死なぬ程度に刃を交えて参ろうではないかっ!!」



「おうぅっっ!!」


吉川元春と島津歳久。

西国を代表する名将が、がっちりと手を取り合って心を一つにし、

本田忠勝という猛将を討ち取る為に進軍を開始する。



「進めぇっっ!!」



「おおっっ!!」

「おおおおおっっっ!!!」





「動いたかっ!」


「殿っ!吉川元春と島津歳久が共に進軍して来る模様に御座いますっ!!」



「はははっ!!そうか!!儂を相手に一人では無理だと判断したかっ!」

「西国の名だたる将をもってしてこの陣形っ!光栄な事よっ!!」


「存分にお相手致そうではないかっっ!!」



「皆の者っ!ゆくぞぉぉっっ!!」



「おおっっ!!」

「おおっっ!!!」



再度激突する両軍。



だが、連合軍は昨日とは何かが大きく違っていた。



しかし、それに気付いている徳川軍は一人としていなかった……。

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