第171話 浜松決戦
馬込川を挟んで対峙した両軍。
川を挟んで東に連合軍 二万三千五百。
西に徳川軍二万七千。
浜松城を頑なに出なかった徳川軍がついに出陣した。
しかし家康は城にて高みの見物と決め込んだらしい……。
「盛山殿……ついに来ましたな。」
吉川元春が声を掛ける。
「しかし家康は出て来んか……。」
「いや、その方が都合が良いかも知れませんぞ。」
立花宗茂が少し笑みを浮かべながら口を挟んだ。
「と言いますと……?」
「しばらく実戦をしていない徳川本軍にとって、これは背水の戦い……。そこに君主が居ると居ないとでは士気が大いに違うと思われまする……。」
「なるほど…確かに……。」
「じゃが、酒井忠次や榊原康政を擁しておる……そして先鋒の本田忠勝。歴戦の猛将に御座る……。心して掛からねば。」
島津歳久が気を引き締める。
「そうですな……いずれも名だたる将。油断など微塵も御座らん!」
「先ずは本田忠勝……。吉川殿!先方をお任せして宜しいか?」
「おおっっ!!喜んでお引き受け致すっ!!」
右の拳と左の手の平をぱんっっと合わせ気概を見せた。
「島津殿、後詰をお願い致すっ!」
「承知っ!!」
「立花殿、儂と本陣にて待機をお願い致したい!」
「御意っ!!」
連合軍の陣容が決まった。
◇◇◇
川の向こうの連合軍を眺めながら本田忠勝が鼻息を荒くする。
「奴らめ……一気に捻り潰してやりたいものをっ!」
「まぁ落ち着け、忠勝……。」
たしなめる様に声を掛ける酒井忠次が更に続ける。
「儂らを相手に少ない兵で挑むとは……これは思ったよりも楽に事が進むかも知れぬぞ。」
「しかし、奴らもここで野戦で戦わねば何も出来なかった筈……。ここぞとばかりに攻め込んでくるかも知れぬな……。」
榊原康政も戦の見通しを考えていた。
「さて……どう出るかの……?」
徳川軍は連合軍の動きを見てから兵を動かす事にしていた。
この決定に対して本田忠勝は苛立ちを覚えていたのだ。
「兵を少しでも損ないたくないのだろうが……。あの様な者共……一瞬で蹴散らせるものを……。だが殿の命では仕方ないか……。」
本田忠勝は自分に言い聞かせた。
本田忠勝の様子を少し心配しながら榊原康政が呟く。
「殿は出来れば兵を失わずにこの戦を終わらせたい。いや、そうでなければその先の殿の野望が遠のいてしまう……。」
「さっさと攻めて参れ……三河武士の精強さ……思い知らせてやるわ……。」
明らかに徳川軍が有利に見えるこの戦。
ついに動く!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます