第9話 岡豊城、紅葉の誓い
秋の深まりとともに、土佐の東部は翼の手によって平穏を取り戻していた。
安芸国虎の堕ちた後、抵抗を試みる有力者たちは次々と降伏し、
土佐はついに統一への大きな一歩を踏み出すこととなった。
翼と盛山、藍は本拠地である岡豊城への帰路についた。
道すがら、紅葉が山を彩る風景が彼らの功績を祝福しているかのようだった。
城に到着すると、翼と藍は偶然にも同じ紅葉を眺める場所に立っていた。
「美しいですね、この紅葉…」藍が穏やかな声で言った。
翼は彼女を見つめ、優しく微笑んだ。
「藍、君がここにいると、この景色がさらに美しく見えるよ。」
藍の頬がほんのりと紅く染まる。
彼女は少し恥ずかしそうに目を伏せ、
「私も、元親様のお側にいると、どんな景色も輝いて見えます」と小声で答えた。
二人は紅葉の下で長い時間を共に過ごし、戦いの日々を忘れるひとときを楽しんだ。
その間、藍の女性らしさがより一層翼の心を捉えていった。
岡豊城の紅葉の下、翼と藍はお互いの心の距離を縮めていた。
翼は時折、藍の目を見つめながら戯れるように話を振る。
「藍、戦のない日々には、何をしたい?」と彼が尋ねると、
藍は少し考えるふりをして、からかうように言った。
「あなたとの鬼ごっこはいかがでしょう。私、隠れるのが得意なんですよ。」
翼はくすりと笑いながら応じた。
「隠れるのが得意なら、探し出すのが上手な俺とちょうどいいね。でも、君を見失うことはないだろうな。」
「それはどうして?」藍が好奇心を持って尋ねた。
「藍の笑顔は、どんな暗がりでも光り輝いて見えるからね。」
と翼は藍の目を真剣に見つめながら言い、藍はその言葉に心を打たれる。
翼は顔を真っ赤にしていた。
(俺こんな事言えるやつだったか? ……ハズイ。)
二人は互いの掛け合いに笑い、恥ずかしさを隠しながらも、自然と互いに近づいていった。
翼は藍の手をそっと取り、彼女の指の温もりに心を温めながら、
「この手を離さないでくれ」と囁いた。
藍は翼の誠実な瞳を見つめ返し、彼女の心の内も同じ願いで満ちていることを、無言のうちに伝えた。
二人の手は、ぎこちなく絡み合いながらも、強く結ばれていくのを感じていた。
「藍、戦が全て終わったら、一緒にこの城を見守ってくれないか?」
翼は静かに、しかし確かな声で言った。
藍は翼の目をじっと見つめた後、優しい微笑みを浮かべて、
「はい、喜んで」と応じた。
「…ん?待て、これっていわゆる死亡フラグじゃね?」
「え?何かおっしゃいましたか?」
「いやっ!何でもないよ」翼は笑いながらごまかした。
(でも今まで史実通りに来てるっぽいからな。俺はまだまだ死なない!こんな可愛い嫁さん出来ちゃったしな)
その夜、岡豊城では小さな宴が開かれた。
さすがの重臣である。盛山は二人の関係を察したようで、
「殿!!まことにおめでとうございます!!」
そして酒と興奮で顔を真っ赤にし、少し涙目で
「二人の未来も、土佐の平和も、この美しい紅葉のように鮮やかでありますように」
と祝福した。
この夜は久しぶりの穏やかで幸せな夜だった。
そしていよいよ土佐統一へと舵を切る。
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