第11話  図書館

 図書館の重い扉を開き、中に入る。


「人はそんなにいないですわね……」


 人気はあまりない。図書館の中も薄暗い。


「ナホド。ここはいつもこのような感じなのですか?」

「いや、いつもならもっと人がいて、ここまで暗くも無いのですが」


 すると、館内を歩く一人の初老の男性に遭遇する。


(何か事情を知っているかもしれない)

「あの、少々構いませんか?」

「ああ、いいが……」

「この図書館、何かありました?」

「実はな、昨日取り壊される事が決まってな」

「え」


 急な取り壊しの決定だ。見た感じ、そこまで施設内の設備は劣化が激しい様には見えないが……。


「誰が決めたんです?」

「トルド王子だ。ここに流刑になった者がいるから、何かしでかさないようにするという噂を聞いたが……」

「教えてくださりありがとうございます」


 私への嫌がらせのつもりか。追放して、学園には来いと促し、更には娯楽を潰そうとまでしてくる。一体何がしたいのかよく分からない。

 男性と別れ、薄暗い館内をトルドと歩きつつ、気になる本に目を通していく。


「医療魔術の専門書……これは借りて置こう。後は……竜種の召喚術もある」

(とりあえず気になるのは借りて置こう。古本や貴重な本も……)


 本を借りる手続きをしに、司書の元へと訪れた時だった。


「もうその本持ってっていいよ」

「良いのですか?」

「もう取り壊されるからね。気になるの持ってっちゃって」


 という事で、貴重な本や気になる本を山積みにした状態で洋館へと帰宅したのだった。


「ごめんなさいね、トルド」

「いえ、これくらい全然平気です」


 そう涼しげに語るトルド。頼もしいが少しだけ罪悪感を感じてしまう。

 部屋に本を運び入れて、昼食まで自室で読む事にした。


「へえ、こんなのもあるんだ」


 こうして1人でいる時は、お嬢様言葉を使わなくていいのでメンタルがちょっと楽になれる。


(ふう~)


 それにしても魔術は奥深い。ゲームでは出てこなかった魔術もたくさんある事を改めて実感したのだった。







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