第6話 ディナーのメインディッシュはローストビーフ。

 前菜はほうれん草とホタテの貝柱を使ったものだ。ホタテの貝柱を囲うように、こげ茶色のソースがかかっている。

 私はナイフとフォークでホタテの貝柱を切り分け、口に入れる。


「美味しい……ですわね」


 という私の呟きに、周囲からおおっという声が小さくもしっかり聞えて来た。


「リリア様が美味しいとおっしゃってくれた……!」

「あのリリア様が……」


 両親も前菜を食べている。顔つきからしてそこまで不満は無いように見えた。前菜を食べ終えたタイミングでかぼちゃスープが手元に届く。これも濃厚な味わいでとても美味しい。


「では、今日のメインディッシュをご用意いたしてもよろしいでしょうか?」


 というナホドの声に、かぼちゃスープを飲み干した私はお願いします。と答える。両親も大きく頷いた。


「了解いたしました。今日のメインディッシュはローストビーフとなります」


 ローストビーフは私も好きだ。特に正月に食べるおせちに入ったローストビーフはとても美味しかった記憶がある。ローストビーフにワサビをつけて食べるとこれまた美味しいし、ごはんも進む。


「では、どうぞ」


 料理人がメインディッシュが盛りつけられたお皿を手元に置く。ハムのように薄切りにされ、こしょうらしき粉と、バルサミコ酢らしきソースがかかったローストビーフ。見た目は高級レストランで食べるようなローストビーフとなんら変わりは無い。


「いただきます……」


 私はゆっくりとフォークとナイフでローストビーフ1枚を半分に切って、口の中に入れた。

 すると、ローストビーフは口の中でほぐれて消えていく。味わいもおせち料理で頂くローストビーフとまんまそっくりだった。


「美味しいですわね、とても美味しいです。ごはんありますか?」

「ごはんですか」


 つい勢いで言ってしまった。だが、ごはんはあったらしく、白いお皿に入ったごはんが手元に用意されたのだった。

 私はその上に、ローストビーフを置いて丼のようにして食べてみた。ゲームのリリアならこんな事は絶対しないだろう。実際両親の私を見る目が何か冷たいような気がしてきた。


「美味しいですわ」


 でも、即席ローストビーフ丼の魅力には抗えなかったので、そのまま食べてしまったのだった。


(付け合わせにわさびがあればもっと良かったかも)

「ごちそうさまでした」


 ディナーを完食した私は、料理人に向けて挨拶を交わしたのだった。料理人は嬉しそうに微笑みながら、ありがとうございます。と言って返す。


(よし、後はお風呂に入ってナホドと話そう)


 

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