第5話 掃除とディナー

 ゴーレムがゆっくりと動き出した。歩きながら手を伸ばして、ほこりを吸い取っていく。その様子はまるで掃除機のようだ。


「私達も手伝いましょう」


 私もメイドから箒を受け取り、掃除を手伝う事に決めた。両親はただただその様子を眺めているだけだが、構うのもめんどくさいのでそのまま放置する。


(流石にメイドやナホド達にさせるだけなのも気が引けるし)


 床や壁を箒で履いて雑巾がけをして、浴槽と言った水回りもしっかり雑巾で拭いて汚れを落として綺麗にする。

 ゴーレムや精霊も召喚しながら、自分でできる部分は自分でやる。


「こんなものでしょう」


 約半日かけて、洋館を綺麗にする事が出来た。魔法ナシなら2.3日はかかっていたかもしれない。時間を短縮できたのはゴーレムたちのおかげだ。


「皆、ありがとうございました」


 私は召喚したゴーレムと精霊達にお礼を言った。実際彼らがいなければ本当に大変だった訳なので。


「……!」


 ゴーレム達はどこか嬉しそうにしながら、しゅわっと光って消えていった。ちなみにこれは所謂契約終了の合図。ゲームでもちょいちょい見られた演出だ。

 

(終わった、かな……?)


 改めて綺麗になった洋館。気が付けばもう夜。あたりは真っ暗だ。ここで私のお腹も減る。


「そろそろ夕食にしませんか?」


 と、ナホドが声をかけてくれた。だがここで両親が声を上げる。


「ここで食べるのかしら?」

「掃除したばかりの部屋で頂くのはなあ……」


 まだ文句を言うか。と心の中で愚痴った私は、両親に向けてまあまあ……となだめる。


「追放処分を受けたのですから、無理は言えませんわ」

「だけど……!」

「私は納得しております。後はお父様とお母様次第ですわ」


 結局、両親は渋々納得し、洋館の中にある食堂へと入ったのだった。


(どうせすぐ手のひらクルーするんだろうなー)


 ナホドに先導されて入った洋館の食堂には、既に料理人が待機していた。先ほどまで掃除していたとは思えない程、食器にスプーンにフォークとディナーを頂く準備が出来ている。


「ディナーがちょうど出来上がりました。どうぞ」

(はやっ)


 もう少しくらい待つかと思っていたが、待たなくて良いなら朗報だ。私はナホドに案内された席に座ると、前菜のサラダが白いお皿に入ってやってきた。

 どうやらほうれん草がメインのように見える。それに真ん中の白っぽいものはホタテの貝柱だろうか。


(どれも美味しそう……)


 ディナーはよく、お客さんのおぢに連れてってもらったのを思い出した。高級フレンチに高級イタリアン、中華だって行った。

 今回のディナーははたしてどのようなメニューになるのか、胸の中でワクワクが止まらない。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る