第3話 追放先に元彼似のイケメンがいた。
とりあえず私はなぜ追放となったのか、その理由をトルドに聞いてみた。
「それは言えぬ、だがリリア、分かっているだろう?」
言えないという反応に私は疑問を感じた。ゲームだとそんな事は言っていないような……
追放が決まった私は、なすすべもなくそのまま両親と共に追放先へと馬車で移送されていく。本当はゲームのリリアと同じようにちょっとくらい抵抗しても良かったのだが、なんだか怖くなったのでやめた。
「リリアが追放なんて……許せませんわ!」
「私達の自慢の娘であるリリアがあのような事をするはずがないというのに……」
両親はこんな感じで私の追放に対して全く納得がいっていない様子だった。この辺はゲームとは変わらず。と言った具合だ。
しかしながら転生して秒で追放とは。せめてリリアに転生するなら入学前とかもっと時系列が前の方が良かったのだが。
それにしても馬車の座席は思ったよりも硬い。硬くて腰と背中とお尻がひりひりと痛む。私が勤めていたキャバクラのソファの方がよっぽど座り心地は良い。
「まだつかないのかしら」
母親はそう愚痴をこぼし始めた。
(この母親の方が悪役令嬢感あるよな)
と、心の中で呟きながら、到着するのをただひたすら待つ。
そんなこんなで馬車が止まって追放先に到着したと知った時には、もう半日が経過していた。
「では、降りてください」
兵士に促されてようやく馬車から降りた時、あまりにも腰とお尻と背中が痛すぎてがに股を通り越した不格好な歩き方となってしまった。
「マジいってえ……!!」
「まあ、リリア大丈夫?!」
「リリアがそんな言葉になるとは……」
(まずい)
「い、痛いです……」
慌ててリリアらしい口調に言い直して、ほほほ……と笑って見せる。両親は追放処分となったからリリアがおかしくなっただのまたもくだらない事を言い始める。
兵士に案内された追放先の拠点は、古めかしい洋館だった。古めかしいとはいえマンション住まいのキャバ嬢な私からすればこれでも十分広い方だと思うのだが、両親にとっては狭くてみすぼらしい家に見えているようだ。
「まあ、こんな洋館に住めだなんて!」
「トルドめ、調子に乗りおって!」
オーバーリアクションな両親を横目に私は1人洋館へと入っていく。すると中から60代くらいの女性のメイド2人と、若い男の執事がやってきた。この3人はゲームにてリリアが追放されたシーンを描いた一枚絵で、ゴマ粒程の小ささで描かれていたような気がする。
「んっ?」
私はふと、執事に目が行った。なぜならその執事の見た目は元彼の伊吹とどっからどう見てもそっくりだったからだ。
「い、伊吹?!」
「え」
執事はびくりと肩を震わせた。私ははっと口を押えて人違いですわね。申し訳ありません。とリリアらしい口調で謝罪する。
「申し訳ありませんが、お名前はなんていうのでしょう?」
「ナホドと申します。リリア様以後お見知りおきを。何かあればこのナホドを頼りになさってくださいませ」
そう言いながらナホドはにこっと笑顔を見せてくれた。その笑顔もまた、伊吹にそっくりだ。
(むっちゃタイプ……伊吹にもそっくりだし、すきだ……)
私の胸が一瞬でときめいた。そのまま勢いに任せてナホドの手を取る。
「ねえ、ナホド!」
「り、リリア様」
「私と話さない?!」
この追放生活、面白くなりそうだ。
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