第2話 悪役令嬢に転生して秒で追放されました

 リリア……リリア・シャーケイン。ロイヤルグレイルに登場する女性キャラクターで所謂「悪役令嬢」なキャラクターだ。

 最初は生徒会長としてヒロインに対しては友好的な態度を取るのだが、トルドルートの場合、途中からトルドを巡ってヒロインと対立する事になる。

 最終的にはヒロインに毒を盛った事がバレて、追放処分になるんだったか。ちなみに他のキャラクタールートの場合は悪役令嬢では無く普通に良い人だったりする。


(性格はテンプレ悪役令嬢と言うよりかは、腹に一物ある感じの悪役令嬢だったよなー)


 ヒロインに毒を盛るのも、実家からの圧を受けて精神的に追い詰められての結果だったりする。まあ、口調は悪役令嬢のそれではあるのだが。

 とまあ、リリアの振り返りはここまでにして、私はメイド2人から挨拶を受けて洗面台に向かう事にした。自分の今の姿を見れば、どうなっているかが分かるはずだ。


「洗面台はどちらで……?」

「あ、こちらです」


 若干驚きの表情を浮かべつつも、メイドが案内してくれた。そして私は鏡で今の自分の姿を知る。


「やっぱり、リリアだ!」


 金髪ロングの髪に、色白な肌と青い瞳。間違いなくリリア・シャーケインのそれである。


「という事は、異世界転生しちゃった……?」


 今の自分はキャバ嬢の浅羽麻美では無く、ロイヤルグレイルのリリア・シャーケインと言う事は……最近よく聞く異世界転生と言うやつか。


「ど、どうしよ……」

(これ、元の世界に戻れるのかな……)


 明らかに動揺が止まらない。だが、メイドの目線から気づいたのは、動揺を隠さないと向こうにもそれが伝わるという事だ。


(と、とりあえず……口調だけでもリリアの真似しておこう)


 私は洗面台で顔を洗うと、自室に戻り、メイドらによって用意されていた私服に着替えるのだった。私服はピンクと白を基調にしており、ロリータファッションぽく見える。

 着替え終わった時だった。メイドがいきなり慌ただしく、動き始める。


(何かあった?)


 すると、メイドが私がいる部屋に勢いよく入ってきた。


「リリア様。トルド王子がお呼びでございます」


 その言葉を聞いた時、私の脳内でピーンと何かが閃いたような、思いついたようなそんな感触がした。


(あ、これ……もしかして……)


 そしてその感触はずばりと的中する事となる。私はメイドや執事、はてはリリアの両親に急かされて馬車に乗り込むと、連れていかれた先は王子トルドのいる王宮だった。私は馬車から降りると両親と共に兵士に連れていかれると、トルドの目の前まで連れていかれる。


「リリア・シャーケイン、そなたを追放処分といたす」


 ……こうしてゲームで何度も聞いた追放宣告を受けたのだった。


(いや、転生して秒で追放とかなんでよ?!)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る