第21話 お嬢様系お嬢様
さて、目の前でなんか手を腰に当てて仁王立ちをしているお嬢様っぽい方がいらっしゃるわけですが、先ほどフリスビーを顔面で受け止めていたので鼻がトナカイの如く真っ赤に染まっている。
鼻血が出ていないだけマシなのかもしれないけれども、とはいえとても痛そうである。
「おっほっほ! 改めましておはようこんにちはこんばんは! わたくしの名前は安藤院ユウラ、ユウラと申しますわー!」
なんかすげーテンションたけーなこの人。
声も高いので聞いていると頭がガンガンしてくる、元気なのは良い事なのだろうけれども。
「え、安藤院?」
と、そしてどうやら優菜は彼女……の、名字の方に何やら心当たりがあるみたいだった。
もしかして知り合いに同じ苗字の方がいるのだろうか?
「安藤院って、確か『セラフィ―』にそんな名前の人がいたと思ったけど」
「如何にも、確かにわたくしは『セラフィ―』の配信者ですわね! つまり一応ユナ様、貴方はわたくしにとっては配信者として見れば先輩という事になりますわね――いつも配信見らせて貰っていますわ! 投げ銭禁止されていますので出来てませんが、心は毎回赤色コメントぶち込んでいますわよー!」
「あ、う、うん。ありがと」
すげーテンション高いので優菜の方も若干ドン引きしていた。
いや、凄いテンションである。
そしてどうも彼女の興味はどちらかというと俺の方にあるみたいで、なんかこちらに対してちらりちらりと視線を向けてきたりしている。
見られる事自体に忌避感はないけれども、そう露骨に興味ありますとされると少し気まずい。
しかし、彼女は一体何者なのだろうか?
優菜的には何となく心当たりがあるみたいだけれども、しかしだからといって心を許している訳ではない様子でもある。
むしろ警戒心を強めているみたいだった。
「……どうして、貴方がここに? ハルに何かよう?」
「ああ、今回の件については運営とかの思惑は一切ありませんわ。そこのところは安心してくださいませ」
「じゃあ、どうして今タイミングを見計らったかのように姿を現したの?」
「いや、タイミング見計らってたらフリスビーを顔面で受け止めたりはしませんわよ」
「いや、そりゃあそうだろうけど……」
「ですが、タイミングを見計らってたという点については、そうですわね少なくとも計画的に姿を現したのは、事実ですわ。何事も最初のインパクトは大事ですから!」
安藤院ユウラ、安藤院ユウラの名前だけでも覚えていってくださいまし!
テンション高めにそう改めて名乗っていた。
うるせえなあ……
「で、改めて聞くけど。何をしに来たの?」
相変わらず警戒心強めで、そんな風にいつもより低めの声で尋ねる優菜。
それに対して彼女、安藤院ユウラはあくまでテンション高めに言った。
「わたくしはあくまでハル様の姿を一目見に来ただけですわ!」
「見に来ただけって、そんな言葉を信じろと?」
「まあ、確かにお上の方々はハル様に対して何らかの意図をもってコンタクトを取りたいと考えていらっしゃるみたいですが、少なくともわたくしは違いますわ! そんな訳で多分今日帰ったらお説教ですわね! すっげー胃が痛いですわね!!」
「ええ……?」
「ですが、ハル様のスメルを嗅げたので無問題ですわね! グッドスメル!!!!」
「ええー……??」
優菜の警戒心は若干弱まったが、逆に「なんだこの不審者」みたいな視線を向けるようになった。
確かに俺もこのお嬢様やべーと思う。
さっきからしきりに鼻を「ふんふん」と鳴らしているし。
「いやー、やはり飼い主がしっかりしているから匂いも健康的ですわね!!」
「良い匂いじゃなくて健康的な匂いって表現する人は初めて見たよ……」
「来世は犬になりたいですわね! 今のところ毎日善行を積んでおりますわ!!」
「輪廻転生的にそれが正しいかどうかはちょっと分からないんだけど」
はあ、と溜息を吐く優菜。
「とりあえず。これから私達、ここで遊ぶつもりだからさ。邪魔するなら帰ってよ」
「そうですわね! 帰りますわ!!」
「か、帰るんだ」
「まあ、欲を言えばここで一緒に遊びたくはあるのですが、そこはやはり飼い主と外で運動をするのはハル様にとっても良い事だと思います故! 一ファンとしては速やかに帰りますわーっ」
「……ファンというのならばリア凸は止めなよ」
しかしお嬢様は「おーっほっほっほ!!!!!」と高笑いを残し、速やかに現れた時と同じく風のように姿を消すのだった。
一体なんだったんだあいつは……?
転生して美少女ダンジョン配信者の飼い犬になったけど剣咥えたらバズった カラスバ @nodoguro
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