第12話 ヒナ姉さんは見た!

 一方その頃。

 ……より正確に言うのならば、優菜とハルが帰還するより少し前。

 つまり、普通に優菜が配信を行っていた頃の話である。

 配信者として、プリン一家の仲間である以上に優菜の事を大切な友人と思っているヒナ──日菜は優菜が配信を開始したと同時にこっそりと配信を覗いていたのだった。

 もちろんコメントはしないが──何があったら遠慮なくするつもりではあるが──無粋な事はせずに一人のリスナーとして彼女の配信を見ていた。

 優菜、ユナの配信は丁寧に進行される事が特徴だ。

 彼女自身がかなり丁寧で優しい性格をしていて、そんな彼女の柔和な話し方に癒されるというリスナーは多い。

 

 しかし、今日の配信はかなりドタバタとしていた。

 まず、やってきた犬、彼女の飼い犬であり件の事件で現れた救世主──救世犬の、ハル。

 彼が咥えていたのはやたら豪華絢爛であからさまに強そうな剣だった。

 


 コメント:いや草

 コメント:危な

 コメント:わんこが触れられるところに危険物を置くのはやめてもろて



 そこら辺に対し日菜は全面的に同意だったが。

 問題はそこからだった。

 突如として画面が真っ白になり、そして次の瞬間一人と一匹は謎のダンジョン内に立っていた。

 動揺していたユナだったが、すぐにダンジョンの探索を開始。

 ハラハラしながら見守っていた日菜だったが、コメントで気づく。


 

 コメント:いや、これなんで映ってんの?



 いや、確かに。

 普段はカメラドローンを利用して撮影を行なっているが、今は当然そのようなものは利用している感じではない。

 それどころか、ユナはかなり自然体のように見えるし、もしかして配信に映っている事に気づいてない?


 それからハルが龍グランドをあっさりと倒してコメントが湧き、そこからゆっくりとダンジョンの奥へと向かう。

 その道中で、ユナの一人語りを聞いてコメント欄と日菜はしみじみした。

 

 そして、運命の時はやってくる。



「なん……え、もしかしてさっきの配信に映って……え、なんで?」


 刹那、コメントが一斉に流れ始めた。



 コメント:(^^)

 コメント:やほー

 コメント:ユナちゃんみってるー?

 コメント:やっぱ気づいてなかったか



 顔を真っ赤にするユナに、日菜は思わずコメントした。



 ヒナch.:ユナちゃんかーわいー(笑)

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