11月26日(日)
おはようございます。この日記(雑記)は週6更新にしようと思っていて、日曜のみお休み頂く予定だったのだけど、今日はなんとなく書くことにしました。代わりに、もしかしたら来週は平日1日休むかもしれません。
昨日はゲーム翻訳LQA(今週中に終わる予定)と原稿(掲載予定原稿が2本、持ち込み原稿1本)を少し進めました。
と、そんな私事はともかく。
本題は、夜中にU-NEXTで映画『バービー』を観たこと。『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』同様、本来は映画館で観たかった作品である。
映画の感想は、後から少しずつ変わってくることも多いので「現時点での」を強調しつつなのだが、見終わった時、正直、「うーん」となってしまった。
「うーん」とは、どういうことか? 2023年最大の話題作(の1本)であり、方々で大絶賛されたガーウィグ女史最新作に何か文句があるのか?
そうですね、「うーん」とは、ストレートに心にぐっと響いたとか、「やっぱり映画っていいものですね…」とはならなかったということです。本作を観終えて、何か思ったこと、感じたことを表明したい、しなければとは思うものの、はたして何が言えるだろう? どうして自分はこの映画を手放しで素晴らしいと思えなかったのだろう? と思わず考え込んでしまうような映画だったということ。
あるいは『バービー』に対して、「踏み絵的な作品」というような先入観と慄きが無意識にあったのかもしれない。本作観賞後、ある種の居心地の悪さを感じるとしたら、その人は、ガーウィグ監督作品の「観客」に想定されていないのではないか? というような。
いや、そんなことはあるまい。この映画はガーウィグ監督過去作同様、スピルバーグ映画並みに多くの観客を射程に入れているはず(日本での興行成績は予想を下回ったようですが、世界的には大ヒットと言って良いでしょう)。映画は観客に開かれている。この映画に対して、誰がどのような感想を抱いても自由である。当たり前ですが。
……。(言葉に詰まっている)
*バービーランドはイデア界のような場所である。そこには多くのバービー(なるものたち)とケン(なるものたち)が住んでいる。通常タイプのバービーとケンは、バービーの不具合の原因と思われるバービー人形の元所持者を探すべく、人間界にやって来るのだが……*
苦し紛れにあらすじを書いてみた。本作において、ストーリーは添え物のようなものとまでは言わないが、意図的に「とってつけたような」話になっており、終始直接的に、風刺的に、啓蒙的に作られているように見える。
マーゴット・ロビー演じるバービーとライアン・ゴズリング演じるケンのルックと演技は、お正月番組のコントのようで思わず笑ってしまう箇所も多々あった。ただ、風刺コメディとして面白いか? と問われると、そういうわけでもない。
主演2人を始め登場人物たちの演技も、多くの映画作品からの引用や、振り切れ無さ具合が(かえって)表層的な可笑しみはあるが、台詞途中でマーゴット・ロビーが台本のバカばかしさに吹き出してしまうのではないか? というようなそれである。映画の「テーマパーク感」に呼応しているような、お仕着せコント的、チープな妙味たっぷりである(そのような退屈さとドタバタ劇感を、あらゆる意味でまったき重要作品である本作において、終始余裕たっぷりに打ち出してくるところに、ガーウィグ監督の強い確信と勢いをひしひし感じたのも事実だが)。
グレタ・ガーウィグ監督は、今作において「プロパガンダ/メッセンジャーであること」と「映画表現」において、ずいぶん前者に寄ってしまったように感じた。もちろんプロパガンダ/メッセンジャーであることと映像作家であることはしっかり両立するのだろうが、見終わった後、巨大かつ古典的な感動に包まれた『レディ・バード』と比べると、「映画表現」としての魅力は大きく後退しているように思う。
後退したぶん、何が前景化してきたかと言えば、やはり「正しさ」である。その正しさには、言うまでもなくフェニミズムも含まれる。そして正しいフェニミズムは、フェニミズムに留まらない。直接的に、風刺的に、戯画化的に描かれた本作のフェニミズムは、そのまま存在の、誕生の、死の本質的な悲哀、そして喜びをも描かんとしたはずだ。
エンディングはビリー・アイリッシュによる「What was I made for?」、あたかも本作の主題を象徴するような、メランコリックな楽曲で幕を閉じる。このフレーズが、今の自分の心にまっすぐに響けば良かったのだが、と強く思った。
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