第27話

「人気者は、つらいわね」なんて言って、ライラは、とっとと部屋を出て行ってしまった。

この手紙が、ロミオからではないと、絶対に言い切れないけど、その線は、薄いようだ。ふりだしに戻ってしまった。


「やっぱり、この部屋を掃除している人から、話を聞かないといけないわよね」

「でも、この手紙を送った相手を見つけて、どうしますの?」

「どうするって…」

「手紙を送るのをやめたくださいと言いますか?」

「…送るなら、せめて普通に送ってほしいとは思うわ」

「もしかしたら、送っていたのかもしれませんよ?」

「え?」

「アリシアは、ロミオ様から手紙をもらっていた時、全部の手紙の差出人を確認していましたか?」

「最初はしていたけど、途中からは…。もしかして、その途中から、この手紙の差出人から、手紙が、来ていたと?」

「そうです。そして、読みもせずに捨てていたことを知られて、このような大胆な行動に出たとは、考えられませんか?」

「そうなのかしら…」


確かに一向に手紙の返事が来ないことにがっかりして…って、差出人不明なんだから、返事なんて書きようがないじゃない。


「いや。早い段階で、手紙が来ていたことに気づいても、どうしようもないじゃない。だって、返事なんてしようにも、差出人不明だもの。そもそも、なんで書かないのよ」

「自分の思いは、知っていてほしかったのでしょうか」

「だからって、こんな一方的に送り付けられても困るわ。私にどうしてほしいのかしら…。やっぱりこの手紙の差出人を探すのは、やめましょうか」

「あら、どうしてですか?」

「だって、探してどうするのよ。熱烈なお手紙どうもありがとうとでも?勝手に手紙を置かれるのは、気味が悪いけど、掃除をしている人が頼まれて、手紙を置いたと考えるべきでしょう」

「そうですね。では、今後は勝手に手紙を置かないように頼みましょうか」

「そうしましょう」


そうして、差出人不明の手紙は、いったんわきに置いておくことにした。

それから、一週間。

あれから、手紙は来ていない。

掃除をしている人に聞いたところ、これを届けてほしいという一文とお金が置いてあったから、私のベッドに手紙を置いていたらしい。

身元不明の、それもなにが入っているかもわからない手紙を女子生徒のベッドに置くなど、ありえない。それを上の人間に確認もせず、独断で。置いた張本人は、たかが手紙ごとき、別に構わないだろうという気持ちだったらしい。しかも、お小遣いまで、ついているのだから。

今回は、特に私たちに被害はなかったので、一応、減給処分ということになるらしい。

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