第26話

レイラは、その白い手紙を見て、眉を上げた。

これがなに?と表情が物語っている。


「これが、最近よく置いてあるのよ」


私が、自慢していると思ってしまったらしい。あからさまに嫌そうな顔になり、眉をしかめると、気分を入れ替えたのか、レイラは、無理やり笑顔を作り、こちらを馬鹿にしたような顔で見つめてきた。


「モテ自慢?はっ!学園の王子様二人から、アタックされているシンデレラは、違うわね」


私が、告白されて、有頂天になるような性格だと思っているのか。

あいにく、こちらは絶賛胃痛持ち案件に頭を抱えている。

わけのわからない手紙を送られてきて、気味悪いと思う女子はいても、喜ぶ女子は、あまりいないだろう。差出人が不明なんて、怖いにもほどがある。


「違うったら。これが、前に送られてきた手紙」

「…この字は、ロミオの…ふん。あの男、私にくれたものと同じことを書いているじゃない。貧相な手紙。で、こっちは…?あら、ずいぶんとシンプル。情熱的ね。…でも、ロミオの字じゃない」

「そうなの」

「で?私に聞きたいことっていうのは、お金に困ったロミオが、あなたとまたやり直したいと思っているかってこと?そんなの決まってるじゃない。イエスよ。あの家、さぞかし贅沢三昧していたんでしょうね。借金は、返せたけど、贅沢が出来なくなったせいで、こちらに無茶ばかり言ってきてるんですもの。さすがに私たちだって、我慢の限界。婚約解消も視野に入れてますの」

「そうだったのね。…大変な時に、こんな手紙見せて、悪かったわね」

「いいえ。こちらも好都合。悪いけど、この手紙を貸してくださる?この手紙を突き出して、婚約解消を迫れば、いくらプライドが高いあの家の主人も口が開かなくなることでしょう。そうなれば、円満に解消できるわね」

「別に、この手紙を渡すのは、構わないけど…」

「この差出人不明の手紙。もしかして、ロミオが、代筆して出した手紙だと思ってる?」

「え、ええ…そうなの。もし、ロミオと仲の良い友達がいたら、教えてもらおうかと思ったのだけど」

「…ありえないわね。あの男は、ぐちゃぐちゃ何かにつけては、理由やら言い訳やらを連ねる男だもの。こんなシンプルに感情や思いを書いてくる男じゃない」

「ほかの人の入り知恵とか」

「今更、あなたに手紙を送るメリットがない。しかも、差出人不明にする意味も分からないわ」

「そ、そうよね」


確かに差出人不明にする理由が、わからない。

私に手紙を出したことがバレると、不都合なことがない限り、普通は書くだろう。

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