第23話
「……」
「あら?」
「アリシア」
「あ、アルセウム。どうなさったの?予鈴は、もう鳴っていましてよ」
「次の授業は、僕も一緒だろう?」
「そ、そうだったわ」
「まさか待っていらしたの?」
「……」
「あらあら」
な、なんなの。この空気。
リリーも余計なことをっ!
「待ってたことなんて、なかったじゃない。お友達は、どうしたのよ」
「僕の告白劇を陰から見ていたからな。笑って見送ってくれたさ」
「…一緒に行けばいいのに」
「お友達より、アリシアと一緒に行きたかったんですわよねぇ?」
「……ああ」
「……」
ちらちらと、廊下を歩く生徒の目が痛い。
なに、なんなの。
「わ、私は、まだ告白を受けたわけじゃありませんからねっ」
「ああ。君の気持ちが落ち着くまで、ずっと待ってる」
「うぃ…あなた、そんな紳士な人間じゃなかったのに…」
「あらあら。開き直られて、強くなりましたわね。アルセウム様。…アリシアは、強く押しますと、大体大人しくなりますの。イケイケゴーゴーですわよ!」
「…助言感謝する」
「グッドラック!」
「ちょ、ちょっと、二人ともなに、勝手に!もうっ!私は、そんな簡単な女じゃないんだからねっ!!!」
知らない男子生徒から「生ツンデレか?初めて見た」とか、ぼそっと言われたけど、なんのことよ!
◆
「アリシア!」
「……」
「あら」
そうだった。この授業にはアーサーもいたんだった。
「アリシア。僕の隣、空いてるよ」
「悪いが、今日は先約がある」
ずい、と私を後ろに追いやって、ルドルフが前に出た。
「なに、君。いつもいるお友達は、どうしたの?」
「お前のほうこそ、もう一人のお友達はどうした。いつもアーサーアーサー言ってる男がいただろ」
「ギルは、…今、お休み中なんだ。だから、僕の隣…」
「悪いけど、私リリーと座りたいから、今日はごめんなさい」
「そういうことだ」
「……」
アーサーでも、あんな顔するのね。
ミア嬢が、なにやら声をかけているが、視線はこちらに向いている。
「あんな男になんか、絶対渡さない」
「その意気ですわ。アルセウム様!イケイケゴーゴー」
「なんなの…」
女子からの視線が痛い。
ルドルフは、同級生の令嬢からも狙われているから、この図は、さぞかし面白くないんだろう。今まで、ルドルフが、女子の隣に座ったこともないし。
「くそ~、うらやましい…あいつ。リリーちゃんの近くに座れるとか聞いてねぇ」
「そういえば、リリー嬢は、アリシアの友達だっけか。くそっ。俺もルドルフに付いていくんだった。そしたら、リリーちゃんともお近づきになれたのに…」
「いや!これはチャンスだ!ルドルフが、アリシアの近くに行く口実に俺たちも一緒に付いていけば、リリーちゃんとお友達になれるかもしれない」
「それだ兄弟!」
「……」
下心丸出しの会話が聞こえてくる。
これで、名門貴族の子息っていうんだから、分からないものだなぁ。
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