第23話

「……」

「あら?」

「アリシア」

「あ、アルセウム。どうなさったの?予鈴は、もう鳴っていましてよ」

「次の授業は、僕も一緒だろう?」

「そ、そうだったわ」

「まさか待っていらしたの?」

「……」

「あらあら」


な、なんなの。この空気。

リリーも余計なことをっ!


「待ってたことなんて、なかったじゃない。お友達は、どうしたのよ」

「僕の告白劇を陰から見ていたからな。笑って見送ってくれたさ」

「…一緒に行けばいいのに」

「お友達より、アリシアと一緒に行きたかったんですわよねぇ?」

「……ああ」

「……」


ちらちらと、廊下を歩く生徒の目が痛い。

なに、なんなの。


「わ、私は、まだ告白を受けたわけじゃありませんからねっ」

「ああ。君の気持ちが落ち着くまで、ずっと待ってる」

「うぃ…あなた、そんな紳士な人間じゃなかったのに…」

「あらあら。開き直られて、強くなりましたわね。アルセウム様。…アリシアは、強く押しますと、大体大人しくなりますの。イケイケゴーゴーですわよ!」

「…助言感謝する」

「グッドラック!」

「ちょ、ちょっと、二人ともなに、勝手に!もうっ!私は、そんな簡単な女じゃないんだからねっ!!!」


知らない男子生徒から「生ツンデレか?初めて見た」とか、ぼそっと言われたけど、なんのことよ!



「アリシア!」

「……」

「あら」


そうだった。この授業にはアーサーもいたんだった。


「アリシア。僕の隣、空いてるよ」

「悪いが、今日は先約がある」


ずい、と私を後ろに追いやって、ルドルフが前に出た。


「なに、君。いつもいるお友達は、どうしたの?」

「お前のほうこそ、もう一人のお友達はどうした。いつもアーサーアーサー言ってる男がいただろ」

「ギルは、…今、お休み中なんだ。だから、僕の隣…」

「悪いけど、私リリーと座りたいから、今日はごめんなさい」

「そういうことだ」

「……」


アーサーでも、あんな顔するのね。

ミア嬢が、なにやら声をかけているが、視線はこちらに向いている。


「あんな男になんか、絶対渡さない」

「その意気ですわ。アルセウム様!イケイケゴーゴー」

「なんなの…」


女子からの視線が痛い。

ルドルフは、同級生の令嬢からも狙われているから、この図は、さぞかし面白くないんだろう。今まで、ルドルフが、女子の隣に座ったこともないし。


「くそ~、うらやましい…あいつ。リリーちゃんの近くに座れるとか聞いてねぇ」

「そういえば、リリー嬢は、アリシアの友達だっけか。くそっ。俺もルドルフに付いていくんだった。そしたら、リリーちゃんともお近づきになれたのに…」

「いや!これはチャンスだ!ルドルフが、アリシアの近くに行く口実に俺たちも一緒に付いていけば、リリーちゃんとお友達になれるかもしれない」

「それだ兄弟!」

「……」


下心丸出しの会話が聞こえてくる。

これで、名門貴族の子息っていうんだから、分からないものだなぁ。

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