第21話

「……」

「またお手紙?」


ベッドに置いてある手紙に、うんざりする。

おそらく、部屋を掃除している人に頼んで、置いてもらっているのだと思う。


「読む気もしないわ」

「今更、婚約破棄を撤回してほしいと頼まれても、そうですわよね…」

「いくらなんでも常識がないわ」

「私からも頼んでみましょうか?」

「お願い」


毎日、毎日、ベッドの上に手紙。

書かれている内容は、いつも一緒。

「婚約破棄を撤回してほしい」「僕の家の事業を手伝ってくれないか」「新しい婚約者には、すでに話を通していて、僕との婚約は解消してくれると言ってくれている」「僕は、君を愛している」

うんざりする。

もう、ロミオと関わるのは、ごめんだ。

父に頼み込み、慰謝料を請求するのを取り消してくれと頼んでみたものの、もうすでに手続きが済んでしまって、支払われてしまったそうだ。

慰謝料を取り消す代わりに付きまとわないで、とお願いするつもりだったのに。これでは、期待が外れた。


「あの、新しい婚約者さんは、それでいいのかしら?」

「彼女の家も大変みたいですよ…。アリシアは、当事者ですから、話します。彼女の家、実は落ちぶれてきていたそうです」

「落ちぶれた家同士が、くっついてどうするつもりだったのかしら」

「どうも話を聞くところによりますと、両家とも見栄を張っていたそうです。どちらの家も自分たちの事業は、うなぎのぼり。家を建て直すのも時間の問題だと言っていたそうです。ですが、蓋を開けてみれば、双方落ちぶれ、それを建て直す財力はおろか、人脈もなかったそうです。どちらも相手側の財力、人脈を利用としていたところだったようでして」

「なんだ。お互い様じゃない。婚約者としては、申し分ないわね」

「そうですわね。ですが、それで少々もめているようですわね。加えて、今回の婚約破棄で、どうもロミオ様の家は、大打撃だそうです。おまけに、婚約者になった方の噂は、落ちる一方。今更、婚約破棄およびに、婚約を解消してもご令嬢の婚約は、難しいでしょうと言われております」


リリーは、色々な令嬢とお茶会をしているそうで、貴族同士の関係や現状、噂に至るまで、とても詳しい。情報通、というやつだろうか。おかげで、こちらも助かることが多い。


「はぁ。でも、そんなに難しい時期なのに、私との婚約をやり直すなんて、向こうの令嬢も面白くないでしょうに」

「まぁ、いつまでも泥船同士、手に手を取り合っているわけにもいかないということではないでしょうか?」

「で、お互い、金持ちと結婚して、やり直そうっていうのね。おあいにくさま、私は絶対、お断りね」

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