第14話
父は、がっくりと肩を落としながら、一応婚約はお断りするという皆を返信してくれるらしい。ぜひともそうしてほしい。
私は、学校に婚約者を捜しに行っているわけではない。人にもよるが、どうしてみんなああも結婚したがるのか不思議だ。良家と婚約。結婚。それ目的で、学校に来ているという人がいるという話をリリーに聞いたときは、そんな馬鹿なと笑っていたが、じきにそれが事実だということを知った。
卒業を間近に控えている先輩など、鬼気迫る勢いである。平民ならば、仕事探しに必死になるところを貴族は自分の婚約相手を必死に探しているのだから、色々な世界や考えがあるもんだ。と号泣してルドルフの膝に縋り付いている姿をルドルフと共に呆然と見ていたことは、記憶に新しい。
泣き叫ぶ令嬢を無理やり引きはがそうにもどこを掴んでもセクハラと叫ばれそうな恰好だったものだから、オロオロとしているその姿があまりにも哀れで、思わず助けたこともあった。
「あなたのことだから、慣れていると思ったけど」
「あそこまで、過激な令嬢は初めて見た…」
貴族は、皆結婚意識が高いのかと思えば、ルドルフは、選べる立場だから、考えたこともないらしい。
そのあと、その令嬢だけではなく、ほかにもルドルフに泣きながら婚約を迫る鬼気迫った令嬢が出てくるも、一応は自分で解決できるようになっているのだから、慣れとは恐ろしい。
なぜか、自分が婚約できないのは、私がいるからだと迫られることがあるのが納得いかない。
「あなたがいるせいで、ルドルフ様は私と婚約をしてくださらないのっ!」
「… なぜ?」
「ルドルフ様から聞きました。あなたがルドルフ様を慕っていると。だから、自分は誠意を見せなくてはいけないと。だから、私とは婚約できないとおっしゃられました」
「あいつ…」
お断りの理由に私を使うとは、小癪な。
この人も自分は、体よくあしらわれたということに気づかないのかしら。
「慕うもなにも、私にはロミオという婚約者がいますし」
「でもあの方には、あなたとは別で、恋慕している方がいらっしゃるというではありませんか」
「は?」
初耳。
余談だが、この時はまだロミオとの婚約破棄がされる前の話で、ロミオに好きな人がいることは知らなかった。
「それにあなたじゃない方とデートしている姿もたびたび目撃されています」
「デートってなんでわかるんですか」
「それは、く、く…」
「く?」
「く…く、ちづけをされていたもの…」
口づけという言葉を発するのが、恥ずかしいのか顔を真っ赤にしながら、令嬢が放った言葉に真っ赤な顔の令嬢とは反対に私の顔は、おそらく青くなっているだろう。
ロミオが別の女性と付き合っている?
確かに私たちの関係は、お金で繋がった関係だが、それでも別の生徒に目撃されるようなところで堂々とデートするとは…。
平民だからと、裏で馬鹿にされていたことは知っていた。
だが、ここまでの裏切りをされるとは…。
こちらだって、ロミオに何もしていないわけではない。色々と支援だってしていたし、数少ないデートのお金は、すべてこっち持ちだし、私だって色々と気を使っていたのに…。
「だから、ロミオ様に当てつけで、ルドルフ様とお付き合いをしているのかと…」
私の顔が、よほどひどいことになっていたのだろう。
先ほどまで、興奮していた令嬢の顔が冷静になっている。
「まぁ。平民の言葉で、こういう時なんて言うんでしたっけ…あぁ、確か…ドンマイ!」
「はぁ…どうも」
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