第12話

私は、父にロミオやその新たな婚約者に言われたことを伝えた。

今までのことを掻い摘まみながら、話続けていると、父の顔色が、真っ青になったと思ったら、真っ白になり、真っ赤になったかと思えば、うつむいてしまった。そして、最後に婚約破棄をされたことを伝えると、突然立ち上がったかと思えば、無言で、扉に向かっていくから、驚いた。母もニコニコしながら、それに続いている。

二人して、どこに行くつもりだ。


「お、お父さん・・・」

「大丈夫だ。ちょっとばかりあいつの頭に風穴作ってくるだけだからだ」

「私は、証拠隠滅とアリバイ工作をしてくるわ」


ちょっと軽く散歩してくるわ。みたいなノリで、とんでもないことをいい放つ両親を慌てて止める。


「お父さん!お母さん!ちょっと待ってよ」

「そうですよ!」

「マーサ・・・」


援護射撃してくれたマーサに安堵する。

やっぱり常識人がいてくれると助かる。


「旦那様!奥さま!犯罪なんかに手を染めて誰が苦労すると思うんですか!?お嬢様が困るんですよ!」

「そういう問題じゃないわ!?」


違う、そうじゃない・・・。

言いたいことは、そうじゃない。確かに私は困ることになるかもしれないが、あんな男のせいで両親の人生を狂わせたくない。


「大丈夫よ、二人とも。私たちは、そんな犯罪がばれるような甘い真似するわけないでしょう?」


お母さん・・・。聖母のような顔をして、なんてことを言うのだ・・・。


「とにかく落ちついてよ。私は、あんな男に婚約破棄されようと、どうでもいいから」

「あなたが、そういうのであれば、しかたないわね」

「・・・ ・・・ ・・・」


残念そうに母は、ため息をついて椅子に座り直してくれた。

隣で、父も無言で席についた。ただし、「不服です!!!」という言葉がデカデカと顔に書いてある。


「あれだけ頭を下げて、頼んできたというのに、勝手だわねぇ・・・貴族というものは、そんなにホイホイ婚約破棄をするものなのかしら」

「しょせん、こちらは金だけが目当てだったのだろう。しかし、子が子なら親も親だ。子どもの戯言に耳を貸すなど、事実も確認せず、婚約破棄とは舐めた真似を・・・」

「まぁ、あちらが婚約破棄をしてくれるのならこちらも好都合というものじゃない。あんなつまらない家に嫁がせるのは、私も反対だったもの」

「確かに・・・あそこの家は、へらへらとしていて芯がない。まぁ、いいように踊らされていて幸せなのかもな。それに私たちの娘も振り回されていたかと思うとぞっとする」

「私も結果オーライだと考えてるわ」

「そうか。それならよかった」


先程まで、殺気だっていた室内が、ほんわかと暖かくなった気がする。

よかった。


「ところで、お前に婚約を申し込みたいという手紙が来ているんだが」

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