第9話
「そういえば、君の家、事業に失敗したという噂が流れているのだけど…本当?」
「え?ええ…噂が流れているのは、本当よ」
事業に失敗したというのは嘘らしいけど。
「僕の家が融資をしてもいいのだけど」
「本当?してくれるのであれば、お願いしたいわ」
事業に失敗したというのは、嘘かもしれないけど、アーサーの家が融資してくれるのであれば、父の会社も助かるだろう。なるほど。こういうところで、親の会社の命運を決めることにもなるのね。やはり、上流階級の人間と付き合うことは、大きなお金を動かすこともできるのね。勉強になるわ。
「それで、僕も君にお願いしたいことがある」
「私にできることなのであれば、なんでもいいわよ」
「本当?それじゃあ、僕と婚約をしてほしい」
「なんだそんなこと…え」
「君に関して、もう一つ噂が流れているんだ。君が婚約破棄をされたって。これは、事実だろう?」
「そ、そうね…で、でも」
「なに?」
「あなたってミア嬢と婚約をしているんじゃなかったの?」
「してない。僕の両親に確認してくれてもいいよ。ミアとあの家が、僕と婚約をしてほしいだけ」
「そ、そうだったの」
「今まで君には婚約者がいたから、言えなかったけど、僕は、君のことが好きです。僕と婚約してください」
「ええええええ…」
なに、なんなの、この展開は…。
まさかアーサーが噂を流した人物なの?私の婚約者になりたかったひとってアーサーのことなの?
でも、ちょっと待って。私とアーサーは、この学校で知り合っただけの関係。おまけに常にミアがいたし、話す機会なんてなかった。好意を抱かれる意味がわからない。
「待ちなさい。アーサー!」
「ミア」
「その話は、どういうこと?アーサーは私の婚約者になってくれるんじゃなかったの?」
「その話は、何度も断ったよね。父の手紙だって来ていたはずだ」
「それは…そうだけど、でも、ずっと一緒にいたじゃない!」
「そうだよ。君がずっと一緒にいた。でも、それは君が追い払ったからだろう」
「… … …」
修羅場だ。
私を挟んでするのやめてくれないかな。とか思う。
教室で叫んでいるものだから、廊下にも声が通っているのだろう。ギャラリー
どんどん増えている。
「ま、まぁまぁ。お二人とも、そういう話はここでするものじゃないと思うよ」
これ以上、なにを言っても二人の問題である。ミアだって、こんなにたくさんの人間に自分たちの事情や過去を知られるのは、嫌だろう。
そう思って会話を止めたのに、まるで、私が事の発端だとでもいうように睨んできた。…いや、事の発端は、アーサーが私に婚約話を持ちかけたせいだ。
そもそも、どうしてこんな教室で告白なんてしようと思ったのだ。雰囲気もなにもないだろうに。
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