第17話
「では、お前がいなくてもこの国は、回るのだな?」
「え?…あ、えと…どうでしょう」
「ここは、小さな国だ。聖女が一人いれば、回る。そうだな?」
「い、いえ。そんなことは…できれば、二人いたほうが、いいです」
「だが実際、この国は一人で回っているではないか。お前で回るのだ。優秀な妹なら、もっと簡単に回せるだろう。…それにこの国の王子にも好意を抱かれているようだしな。ゆくゆくは、将来の王となる男。あぁ。そうだ。その男が妹は、とても優秀な聖女だと俺の前で、語っていたな」
「そうですか」
まぁ、そりゃあ、あの男から見たら妹は、優秀だろう。
「妹は、才能があります。ですが、まだきちんと聖女の仕事を分かっていません。だから、妹だけで、この国を守ることは難しいです」
「だが、不可能ではない。そうだな?」
「…なにが言いたいんですか?」
まさか殿下まで、私は聖女にふさわしくない。とかいうのだろうか。
そうだとしたら、落ち込むから辞めてほしい。
こっちは、こっちで必死にやっているんだ。
睡眠時間や好きなことを削ってまで、国に捧げているのだ。
それなのに今日、初めてあった人にまで、否定されたくない。
「そう睨みつけるな。愛くるしいだけだ」
「あ、愛!?」
帝国の王子様。すげー。
こんなことシラフで言える男、初めて見たわ。
あ、いや。うちの王子様も妹に、言いまくってるけど、私たち、初めましてしたばかりだよね?それなのに、睨みつけている女に愛くるしいとか言えちゃう殿下すげー。すげー。
すごすぎて、鳥肌がやばい。
殿下の顔が、国宝級じゃなかったら、もっとやばかったわ。
やっぱり顔面偏差値大事だな。
「俺の国に来る気はないか?」
「帝国ですか?!」
この人、何言ってんの!?
帝国に私が行く?
ってか、聖女の引き抜きって駄目じゃない?
私の同意をとろうとしているか、いいのか?いや、それでもいいわけないよね?
一応、聖女って、国の最重要人物の一人だよ。
国によっては、国が傾く可能性だって、あるんだよ?
だから、聖女は秘匿されているところだってあるのに。
「も、申し訳ございません…」
「ん?どうした?この国は、お前の妹が守り、お前が帝国に来ればいいと提案しているだけだが」
「それは、私では判断しかねます」
「お前の意志を聞いている。この国は、お前にとって守るに値する国か?」
「それは…」
確かに王子はくそだし、妹は、私のことを手伝ってくれない。
不満はある。
このまま、使いつぶされるだけでいいのかなって毎日考えている。
でも、それでこの国の人たちが、どうでもいいのかと言われると、それは違うと否定できる。
ずっと守ってきたこの国。
年数が違う。
今まで、やってきたことを否定したくない。
妹は、まだ独り立ちできるような力も知恵も持っていない。
だから、私はまだここを離れられない。
「私はこの国を守りたい。それは言えます」
「そうか。それならいい」
聖女の引き抜きなんて、王に言えば、なんて言われるか。
変なことになっても面倒だ。
だから、私はこの時のことを誰にも言っていなかった。
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