第15話

「そうだな。何か食べるか?お腹がすいているのではないか?聖女殿は、連日働きづめと聞く」

「… … …」


胃が、ストレスで痛い。

こんな状態で、ご飯なんて食べれたものじゃない。


「どうした。俺と一緒に食事はできないか」

「い、いえ。滅相もありません。ありがたく頂戴します」

「そうか。…おい」

「はっ」


そばに控えていた男性が、俊敏に部屋から、出ていく。

ああ…、あんまり豪勢なものじゃなければいいな。こう胃に優しいスープとかでいい。なんなら、水でいい。


「ところで、聖女殿。聞きたいことがあるのだが」

「あ、はい。なんでもどうぞ」

「魔力紋の検知についてだが、」


笑顔だ。それなのに怖い。眼光が鋭く光っている。

周りの人間も、どこか緊張感を漂わせている。

なんだろう。この圧は。

魔力紋の検知なんて、それほど大したものではないだろうに。


「持続時間。再度、発動するときに必要な期間。範囲。そのほか諸々、教えてほしい」

「わかりました」


「持続時間については、正直限界まで使ったことがないのでわかりません。最大24時間使用したことはあります」


一瞬、部屋がざわついた。

私は、ざわついたわけが分からずに、ぼそぼそと話している人たちを見た。


「騒ぐな」


殿下の一声に部屋が、一瞬で静まり返る。

なんなの。こっちとしては、そっちも話してもらっていたほうが、緊張しないで済むんだけど。


「すまんな、聖女殿。騒がしくして」

「いえ」

「それで、限界まで使うとしたら、どれくらい行ける?」

「… … …」


魔法が発動している間は、眠れない。

だから、言いかえれば、眠らずに魔法をいつまで使えるか、という質問になる。

回復魔法を使えば、一応、魔力が尽きるまで起きていることが出来る。

だけど、最近は、魔力が尽きるまで、魔法を使ったことがないから、わからない。

うーん…。正直に答えてもいいんだけど…。


「3日です」

「…では、次に再度発動するときに必要な期間は?」

「期間?」

「ああ。準備がいるだろう」

「準備?魔力が回復すれば、すぐにいけますよ」

「…ほう」

「ま、魔力回復に必要な日数は?完全回復まで、どれくらいかかりますか?」


知らないおじさんが、詰め寄ってくる。

思わず、私は体を引いてしまった。

え、誰?この人。


「どれくらいですか」

「…えーっと…6時間もあれば?」


まぁ、最近は完全回復なんて、待った試しがないけど。



「6時間!」

「…帝国の聖女より、遅いのでしょうか」

「3日、魔法を発動し続けて、6時間で回復するなら、早いほうだろう。それより、いつ俺が、前に出ることを許した?」

「も、申し訳ございません…。ですが、聖女殿にどうしても」

「俺は、いつお前に口を出していいと許した?」

「… … …」


えぇ。

雰囲気悪っ…。

なんなの。

一応、後ろにおじさん下がったけど。顔が、怖い。ずっと私を見てるんだけど、え?なにかした?

ってか、殿下にあんなこと言われても、反省した顔を見せないおじさん、すごいな。心なしか、ギラギラとした目で、私のことずっと見てるし。

怖っ。

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