18. 公園での遊び
星極は軽快な足取りで歩き、久々の自由な時間を楽しむことにした。カロストの忙しい街を通り抜けたばかりで、彼は微妙な疲労感を感じていたが、それはむしろ精神的な緩和感からくるものだった。そこで、緑豊かな小道を辿り、近くの公園へと足を運んだ。
公園は非常に巧みに設計されており、すべての景観が秩序正しく配置されている。高い木々が小道の両側に並び、枝葉の間から斑模様の光が地面に降り注いでいた。数カ所の噴水がささやかな水音を立て、遠くから聞こえる鳥のさえずりと相まって、自然と調和した雰囲気を醸し出していた。星極にとって、この静かな環境は、むしろ喧騒の街から一層の距離を感じさせた。
彼はゆっくりと歩きながら、周囲の静けさと安らぎを味わっていた。公園にはほとんど他の人影が見当たらなかったが、それはおそらくエルフたちが仕事に忙しいか、家で午後のひと時を楽しんでいるためだろう。星極はむしろ、この静寂が心地よかった。たまには静かに過ごすのも悪くないと思った。
緑の芝生を歩きながら、星極は小道の近くに古いオークの木の陰に隠れた長椅子を見つけた。木漏れ日の点々とした光が地面に映り、全体的に温かく静かな風景を作り出していた。星極はその椅子に近づき、そっと座って背もたれに寄りかかり、目を閉じて周囲の自然の気配を感じ取った。
彼は特に何かを考えるわけでもなく、このひとときの静けさに身を委ねた。このようなリラックスは彼にとってごく自然なことであった。しばらくの間、彼は静かに座り、耳には風が木の葉を撫でる音だけが聞こえた。連日の忙しさと考え事も、この瞬間にはすっかり忘れてしまったかのようだった。
一方、その公園のもう一方では、事態はそれほど穏やかではなかった。
若いエルフ、イスコは散歩をしながらも、何か異変を感じ取っていた。表面上は悠然としていたが、心の中ではすでに警戒心が高まっていた。カロストの警備員として、彼は自分が誰かに狙われているような気配を敏感に感じ取っていた。
「くそっ、今日は護符を忘れてきたのか?」イスコは内心で悪態をつきながら、周囲の様子を鋭く見回した。ここは少し離れた場所で、高い木々と整えられた灌木に囲まれ、ほとんど人影が見えない。空気中に奇妙な圧迫感が漂い、彼をますます不安にさせた。
「落ち着け、落ち着け……ただの錯覚かもしれない。」彼は自分を落ち着かせようとしたが、その不安はどんどん強まっていき、何かが暗闇の中から近づいているように感じた。
突然、背後から微かな足音が聞こえた。イスコは素早く振り返り、音の出所を凝視した。そこには黒いローブを纏った人影が静かに立っており、手に杖のような長い棒を握り、怪しげな気配を放っていた。男は仮面をつけ、その表情は陰影に隠されていて、極めて神秘的で危険な印象を与えた。
「やはり俺を狙ってきたか。」イスコは心の中で覚悟を決め、無意識に腰に手を伸ばした。目の前の相手がただ者ではないことは明白で、特にその不気味な気配が、相手が普通の人間ではないことを示していた。
「お前は誰だ?何を企んでいる?」イスコは時間を稼ごうと、探りを入れるように話しかけたが、すでに心の中ではどう戦うかを考えていた。
黒ローブの男は何も答えず、ただ黙ってイスコを見つめ、手にした長棍をわずかに持ち上げた。すると、空気中に無形の圧力が漂い始め、イスコは胸に重苦しさを感じ、呼吸が困難になってきた。
「どうやら話し合いで解決するつもりはないようだな。」イスコは自嘲気味に笑い、素早く腰から短剣を引き抜いた。この短剣は陽光の下で鋭い光を放っており、精緻に作られた武器であることがわかった。目の前の相手が手強いことは承知していたが、イスコも簡単には屈しない性格だった。
「さあ、どっちが早いか試してみようじゃないか。」イスコは低く呟くと、足を動かし、全速力で黒ローブの男に向かって突進した。先手を取ることで、この戦いにおいて有利に立つことができると考えたのだ。
黒ローブの男はイスコの突然の攻撃に驚くことなく、冷笑を浮かべ、手にした長棍を黒い弧を描いて振り下ろし、イスコの攻撃を迎え撃った。長棍と短剣が空中でぶつかり合い、鋭い金属音が響き渡った。イスコはその一撃の強大な力を感じ、数歩後退させられた。
「力があるじゃないか……」イスコは歯を食いしばりながら体勢を立て直し、さらに警戒を強めた。この戦いは、自分にとって厳しいものになることを予感していた。
黒ローブの男はイスコに休む暇を与えず、すぐに反撃に移った。長棍が空中で舞い、陰風を巻き起こし、周囲の空気を引き裂くかのようだった。イスコは左へ右へと身をかわし、相手の激しい攻撃をなんとか避けようとしたが、それでも無形の圧力が迫ってくるのを感じていた。
「まさか、今日ここで終わりか……?」イスコの額には汗がにじみ、心の中で自分の油断を悔やんだ。普段から危険を好んで挑む彼だったが、今回は相手を甘く見てしまったようだった。
黒ローブの男が放つ一撃がイスコに迫ったその瞬間、イスコはとっさに身を翻し、かろうじて致命的な攻撃を避けた。同時に、彼は手にした短剣を男の脇腹に向かって素早く突き出し、形勢逆転を狙った。
しかし、黒ローブの男の反応も迅速で、イスコが攻撃するのとほぼ同時に、長棍を一振りして短剣を阻んだ。イスコは手の中の短剣がしびれるのを感じ、今にも手から滑り落ちそうだった。
「くそ……」イスコは低く呪いの言葉を吐き、なんとかしてこの場から脱出する方法を考え始めた。このままでは命を落とす可能性が高いと感じていた。
黒ローブの男はイスコの意図を見抜いたかのように、長棍を振りかざすと、そこから黒い気配が放たれ、イスコの顔面に向かって襲いかかった。イスコは全力で避けようとしたが、その力に打たれ、まるで糸が切れた凧のように吹き飛ばされ、地面に激しく叩きつけられた。
イスコは目の前が暗くなり、耳鳴りがし始め、意識が遠のいていくのを感じた。「まさか、ここで終わりか……」彼は不満を抱きつつも、体はもう言うことを聞かず、視界が徐々にぼやけていった。
その頃、長椅子で小憩していた星極は、周囲に不穏な気配を感じ取った。目を開けて空気中の異変に気づくと、すぐに立ち上がり、その方向へ向かって歩き始めた。彼がその場所に近づくにつれ、踏みつけられた落ち葉やかすかな戦闘の跡が目に入った。
星極は眉をひそめ、さらに前進した。すると、少し先の草地で、一人のエルフが倒れているのが目に入った。黒髪のエルフが地面に横たわり、明らかに意識を失っている。そして、その傍らには黒いローブを纏った謎の人物が冷ややかにイスコを見下ろし、手にした長棍を少し持ち上げ、周囲に警戒を示していた。
星極は歩みを速めて近づき、イスコの顔が蒼白で、呼吸が弱くなっているのを確認した。彼が重大な攻撃を受けたことは明らかだった。その時、黒ローブの男は星極の接近に気づき、イスコから視線を移して星極を鋭く見つめた。面具越しでも、星極にはその敵意がはっきりと感じ取れた。
次の瞬間、黒ローブの男は突然黒い霧となって空中に消えた。星極は迷わずイスコのもとに駆け寄り、彼の状態を確認した。彼は膝をつき、指でイスコの脈を調べ、わずかに生命の兆候が残っていることを確認した。
「ふむ……まだ死んでないな。」彼は低く呟き、淡い青色の炎を手のひらに灯し、その炎をイスコの胸にそっと置いた。炎が彼を照らすと、イスコの顔色は少しずつ良くなり、呼吸も穏やかになっていった。
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