14 神を覗くと
星極は突然、ライナの瞳に微かな火花が揺れるのを感じ取った。まるで何かが彼女の目の前をかすめていったかのようだ。このカロスト全体で、彼女にこのような反応を引き起こせる存在は限られている。異端の邪神を除けば、その自然神くらいしかいないだろう。
セレナが先ほど急いで去った様子を思い出し、星極はほぼ確信した。今回の来訪者はその後者であるに違いない。
彼は視線をライナに向けた。すぐに彼はかすかな抵抗を感じた。それは自然神の加護であり、彼の探査を阻もうとしていた。しかし、星極にとって、その障壁は薄い霧のようなものでしかなかった。少し力を加えれば、容易に貫くことができた。
「神よ、どう対話すべきかはわかりません。失礼をお許しください、率直に申し上げます。」
星極の視線がライナを通り抜けると、彼女が片膝をつき、頭を垂れ、深い畏敬の念を抱いているのが見えた。彼女の前には、薄いヴェールが垂れ下がり、自然神の姿をぼんやりと覆い隠していた。
ライナが顔を上げた瞬間、星極の炎もまた躍動した。彼はライナの目を通して、自然神の姿を捉えた。
それはまるで彫刻のような完璧な輪郭だった。長い髪が地に垂れ、表情は優しくも威厳に満ちていた。彼女は神座に静かに座り、春風のようなまなざしでライナを見つめ、母性的な温かさを帯びていた。
星極は承知していた。これが人々のために編まれた幻影であることを。本当の神とは、無数の信仰が集まって形成された存在であり、人間の目に映る完璧な形など持ち得ない。性別の区分すら意味をなさないのだ。最も統一された種族ですら、その信仰する神は多くの意識の投影に過ぎない。
しかし、ライナはそのことを何も知らない。カロストのエルフたちは、神についての理解がまだ始まったばかりだった。
「神よ、私たちは気づきました。邪教徒たちが崇める異端神は、ただの虚構ではないと。私たちの仲間はすでに邪神の力によって傷ついています。」ライナは深く息を吸い、その発見と懸念をすべて打ち明けた。その声には、わずかな緊張が漂っていた。「今や、彼らはただの狂信者ではありません。邪神の力は精神空間にまで浸透し、我々の族人に直接害を与えています。警戒を強化しなければなりません。」
自然神はわずかに首を傾け、考える素振りを見せた。その圧倒的な生命力が春風のようにライナの頬を撫で、地面の枝がそれに応じて成長し、質素で優雅な椅子を形成した。
彼女はライナに座るよう促し、温かみのある声で、少し茶目っ気を含ませて言った。「カロストの安全を守っているのは、いつもあなたと軍隊じゃない。どうして私のような老神の意見を聞く必要があるのかしら?」
彼女の声はまるで木の梢を撫でる微風のように柔らかく、心を魅了するようだった。ライナの目は次第に霞み、彼女の思考は朧げな霧の中に引き込まれ、すべてが曖昧になっていくようだった。
星極は、ライナの精神がすでに自然神によって支配されていることを感じ取ったが、それでも彼は静観することにした。彼には、これが関与すべき領域ではないことがわかっていた。
「興味深いわね。邪神の力で本来なら命を落とすはずだったエルフが、何らかの神秘的な力によって救われたとは。」自然神は独り言のように呟いた。彼女は星極がライナの視点を通じて彼女の一挙一動を見守っていることにまったく気づいていないようだった。「一体誰が、そんな強大な力を持っているのかしら?あの邪神は厄介な存在なのに。」
「そうだな、一体誰なんだろう?」星極は心の中で少し皮肉を込めて応えた。そして、自然神が「イスコ」という名前をそっと口にしたとき、彼はようやく悟った。
それは、私のことか。
星極は、かつて邪教徒の拠点を破壊した際、彼らの脳内にいくつかのものを植え付けたことを思い出した。彼は単に彼らの心の奥底を覗くつもりだったが、後になってエルフの一人がそこに入り込んでしまい、彼はやむを得ず救い出したのだ。
自然神は独り言を続け、明らかにライナの中にあるその見知らぬ力に興味を抱いているようだった。「この力…なるほどね、カロストには確かに変化が訪れているようだ。この力を感じたのは、あの邪神以来のことよ。滑稽なのは、その邪神の力が彼に及ばないことだわ…」
「どうやら、あの外来者が何か面白い変化をもたらしたようね。今回は果たして彼が生き残るかどうか、見てみたいものだわ…」自然神の目が微かに細まり、思索にふける様子を見せた後、彼女はライナへの支配を解いた。
ライナの意識が徐々に戻り、自然神も威厳ある姿勢から、より親しみやすい雰囲気に戻った。彼女の声は母のように優しく、「ところで、最近カロストはどう?生活に何か問題はないかしら?隣に住んでいるエルフはどう?見た目も良いし、収入も申し分ないじゃない?」と問いかけた。
まだ完全には意識が戻っていないライナは、少し混乱した様子で、「ええ…少し考えさせてください」と答えた。
「急がなくていいのよ。エルフの寿命は長いんだから、決断する時間はたっぷりあるわ。ただ、セレナ大祭司みたいにはならないでね。あんなに美しいのに、私のもとに仕えている間ずっと独り身なんだから。」
ライナは冷や汗をかき始め、なんとか「絶対…絶対そんなことは…」と返事をした。
自然神は微笑み、さらに茶目っ気たっぷりに続けた。「どうしてもダメなら、あの外来者を考えてみたらどう?彼の出自は謎だけど、とてもハンサムよ!あんなに格好いいエルフは見たことがないわ。」
「ええ…仕事の都合上、私は結婚とかには向いていないんです…」ライナの声はすでに震えていた。
星極はゆっくりとライナとの接続を断った。自然神のこのお茶目な対話は、彼にかつて周りにいた人々を思い出させた。
だが、あの時の彼は、神座に座り、人々に囲まれ、問われる存在だった。それが今では、記憶が潮のように押し寄せ、彼にかすかな不快感を覚えさせる。
自然神の親しげな挨拶は、ライナに目眩を覚えさせると同時に、星極の中に深く眠る不愉快な記憶を無意識に呼び起こしたのだった。
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