群星になれば

次元上浮

　セレナと別れた後、星極は一人でシャワー室に入った。服を脱ぐとき、監視している視線が確実に消えたと彼は感じた。温かい水が体に当たり、不要な思考は排水と共に流れ去り、星極は自分が持つ情報や疑問を整理し始めた。

　カーロスト、この世界における唯一の国家。少なくとも、星極の感知内で、カーロスト以外の大型組織は存在しない。一つの中央政府によってできている、天災などもなく、人々は普通に暮らしている世界では、「深海」の中でそんなに不安定に光るはずがない。何かが彼の視線外でこの世界を影響している。

　それにしても不可解だ。現在のカーロストは安定しているはずだ。シャワーを浴びながら、星極は感知を市中心及び周辺の都市まで広げた。彼の視界内では犯罪や混乱は一切なく、精霊たちは誰かが定めた軌道に沿って活動しているようで、混乱は見られなかった。

　このように安定した国、そして科学や魔法技術が現代に劣らないカーロストに影響を与えるようなものは、必ず何らかの大事件や大きな影響を引き起こすはずだ。しかし、星極の感知範囲内ではまだそのような兆候は見られない。

　考えている時に、カラスはいつの間にか窓の外に立ち、中にいる星極をじっと見つめていた。星極はそのカラス視線を合わせ、星極の視線を感じてビビったように、そのカラスはすぐに逃げて、暗闇の中にいる溶けた。

　自分の考えを確かめるために、星極が手を浴室のシャワーヘッドに置くと、床に流れる水が金色の炎に変わり、配管を通ってシャワーヘッドの先端にまで広がった。シャワー室は金色の光に包まれ、金色の炎に包まれた科学、あるいは魔法製品に使われている技術、原理という莫大な知識は一滴の水となり、星極の脳内に流れ込んだ。

「呪文の小型化や魔能材料の量産化か。偉いことだ。」と、彼は思った。これまで彼が見てきた多くの文明は魔法の存在によって発展が遅れていた。理由は、その文明たちが魔法を単なる魔法として扱っていたからだ。

　しかし、もしその文明たちは魔力の原理を研究して、魔法を生産力向上のための道具として活用し、普及させれば、文明は新しい段階に進むことができる。だから、少なくともカーロストは地球の産業革命後の時代以上の科学、魔導技術を持っている。

　星極はシャワー室から出て、パジャマはもう用意されてあった。着てみる、そのパジャマはまた温かい。元々パジャマが置かれている地面に、青い魔法陣のような模様が書かれていた。

「なるほどね、転送魔法陣か。」と、星極は心のなかで感嘆していた。「カーロストは結構進んだね。」

　少し体を動かし、ベッドに横になった。天井をじっと見るとき、星極はかなり弱いが、たしかに存在するいくつかの目線を感じた。

「覗きはよくないよ～」と、彼は自分の感知を強めた。

　部屋の主な色調は白で、壁にはところどころに様々な色のクリスタルが装飾として使われている。床は木製の板で作られており、時々木の香りがする。日用品は非常によく整えられており、テーブルの上にはクリスタルの容器に入った様々な果物も用意されている。部屋には窓が二つあり、ベッドがある部屋の窓の外は真っ暗で、しかし巨木の輪郭がかすかに見える。

　草と木が風に吹かれるささやき声を奏で、静かな夜が彼の視界を覆う。もう一方の窓は華やかな都市が見え、部屋の優れた防音性のために人々の騒音は聞こえないが、彼らの熱意は厚いガラスを通じて伝わってくる。

「北に三つ、床に二つ、天井に一つ。」と、指先を布団の下に隠し、周囲の監視カメラの死角から星空の炎を壁まで伸ばし、すぐに監視カメラが炎で包まれ、「何か」がその炎に焼かれている。

　カメラの事を無視して、星極は自分の手を見つめていた。そして彼は思った。

　この都市の謎は多過ぎる。その謎を明白にするためには、少し自分の特殊手段が必要だそうだ。星極はそう思いながら、星空の炎は目の中で静かに燃焼して

「さて、夜はまだ長い」と

　彼は目を閉じ、力強く息を吸い、小さな声で軽く呟いた。

「次元上浮」

　少しの沈黙の後、「？」と、セレナは眉をひそめながら星極の部屋の前に立ち、ドアを叩いた。彼の疲れた声が聞こえると、セレナは彼がもう寝ているのではないかと思った。監視カメラのデータを見ると、星極はすでにベッドで眠っていた。セレナは目を閉じ、心の中で誰かと話をしている。

「カリスタ様、異常はありません。目標は睡眠中です」と彼女は報告した。

「わかった。監視を強化します」との返答があった。「あ、警備の精霊から報告があります。『鉱山の警備が襲われ、現在行方不明です』とのことです」

「了解しました。目標に集中します」とセレナは応答した。その後、彼女は目を開けた。