第54話 幼馴染と同棲14

「そういえば澪ねぇちゃん、この後どうする? 今日はどこか出かける?」

「うーん、そうだねぇ。昨日は家でゲームいっぱいしたし、今日はどこか遊びに行こうか。航くんはそれでいい?」


 朝食を食べ終え、俺と澪ねぇちゃんで二人で後片付けをしていたタイミングで、今日の予定について話し合う。無計画なのはやっぱり失敗だったな‥‥。


「学校の人に、俺たちのことがバレるのは正直まだ怖いけど、せっかくの連休だし、どこか遠いところにでも行く?」


 そうすれば、高校の生徒や教師なんかと鉢合わせる可能性も低くなるだろうし、澪ねぇちゃんも心置きなく遊べるだろう。この連休のために、澪ねぇちゃんは頑張って仕事を終わらせたんだから、できる限りのことはしてあげたい。


「そうだなぁ‥‥だったら、レジャー施設とか行ってみない? あと、若葉ちゃんたちも誘って」

「紅葉たちも?」


 澪ねぇちゃんの口から出てきた名前に、俺は少しびっくりして、聞き返してしまう。てっきり澪ねぇちゃんのことだし、二人きりが良いって言うと思ってたんだけど‥‥。


「うん、実はこの連休中に一緒に遊びに行こうって若葉ちゃんと話してて。若葉ちゃんたちはいつでもいいよって言ってくれたから、航くんさえよければ一緒に行きたいなって‥‥だめ?」

「ダメなんかじゃないよ。そうと決まればさっそく紅葉たちに連絡してみよう」

「うん!」


 手早く後片付けを済ませ、出かける準備を始める。その過程で、紅葉たちにも電話をかける。


『お、航から電話なんて珍しいな! どうかしたか?」

「おはよう紅葉。今大丈夫か?」

『おう、全然いいぜ』

「今日、これから澪ねぇちゃんと一緒にレジャー施設に行こうって話になってさ。澪ねぇちゃんが、紅葉たちも誘いたいって言うから、どうかなと思って」

『お、いいのか? そういうことだったらもちろん行くぜ! ちょうど、俺も若葉もどこか行こうって話してたところだからさ!』

「了解。また連絡する。13時に、この前の駅に集合な」

『おう!』


 そう言って俺は電話を切る。とりあえず、紅葉たちが一緒に来てくれることになったのは、俺も嬉しい。澪ねぇちゃんにも報告しないと。


「澪ねぇちゃーん?」


 けど、何故か名前を呼んでも、澪ねぇちゃんの反応がない。母さんたちの部屋にいるのかな。一緒に生活する間は、自由に使っていいって言われてたし。


「澪ねぇty‥‥ごめん!」


 部屋のドアを開けた瞬間、とんでもない光景が目に入ってきたので、俺はほぼ反射でドアを閉じる。多分、俺が部屋を開けたことにも、澪ねぇちゃん気づいたよな‥‥今のドアの音で。


(黒‥‥だったな‥‥)


 俺はさっきの光景が脳内にフラッシュバックしてきたが、フルフルと首を振ってその光景を振り払う。意図的ではないとはいえ、をしてしまったことに変わりはないんだ‥‥ちゃんと忘れよう‥‥うん‥‥。


(黒‥‥‥‥‥‥‥‥)

「見た?」

「ほわぁ?!」


 少しドアを開け、顔だけを覗かせた状態で話しかけてきた澪ねぇちゃんに思わず、俺は変な声を出す。


「み、見たってなにが‥‥?」


 俺は視線を下げて、できるだけ澪ねぇちゃんに目を合わせないようにする。


「私の下着‥‥見た?」

「ミテナイデス‥‥」

「色は?」

「‥‥水色とか?」

「正解」

「え?! 黒だったはず‥‥」

「やっぱり見てるじゃん!」

「あ‥‥」


 しまった。まんまと罠に嵌まってしまった‥‥。


 恐る恐る澪ねぇちゃんの方を見ると、さっきまでと同じように、ドア越しに顔だけ覗かせている。変わった点といえば、ちょっと涙目になっていることだろうか。


「航くんのえっち!」


 そういって勢いよくドアを閉める澪ねぇちゃん。

 やべぇ‥‥これから出かけるのに、この雰囲気どうしようかな‥‥。





(今日は可愛いの付けてなかったのに‥‥)


 ドア越しの澪ねぇちゃんのつぶやきが俺に聞こえることはなかった。

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