第52話 幼馴染と同棲12

「ん、ふわぁ‥‥」


 7時にセットしておいたスマホの目覚ましが鳴り、俺はその音で目を覚ます。昨日、怒涛のゴールデンウィーク1日目が終了し、連休2日目を迎える。


「朝ごはんどうしようかなぁ‥‥」


 そんなことを考えながら、俺は自分の部屋からリビングへと向かうため、階段を下りる。昨日の夜に炊飯器だけは仕掛けておいたから、おそらくご飯は炊けてる。あとは適当に、おかずを作ってそれで済ませればいいか。


「澪ねぇちゃんは‥‥まだ寝てるか」


 リビングへ到着すると、そこには布団の上で、スヤスヤと寝息を立てながら眠っている澪ねぇちゃん。昨晩、俺の部屋に忍び込んできたときはさすがに呆れたが、無理やりリビングへと押し戻すと、すんなりリビングで寝てくれた。


「こうしてみると、やっぱり美人だよなぁ」


 俺は眠っている澪ねぇちゃんに近づき、顔の近くでしゃがみ、澪ねぇちゃんの顔をまじまじと見つめる。

 透き通った白い肌に、長いまつげ。目鼻立ちも整っているし、本当に美人だ。こんな美人が、俺の幼馴染で、担任で、しかも想いを寄せてくれているなんて‥‥ほんと出来過ぎた話だよな。


(怖いくらいに出来過ぎてるな‥‥)


 改めて、自分の恵まれすぎた境遇に、心の中で苦笑しつつ、俺は澪ねぇちゃんのナチュラルブラウンの綺麗な髪の毛をサラリと撫で、その場から立ち上がり、キッチンへと向かう。


「さてと、朝ごはん、作らないとな」


 俺は流し場でさっと手を洗い、冷蔵庫から昨日買った食材を取り出して、朝ごはんの準備に取り掛かる。

 俺は、朝ごはんを作るときは、品数を少し多めにして、一つ一つの量を少なくしている。そっちの方が、いろいろなものが食べられて、朝から気分も上がるんじゃないかなって思ってるから。確証はない。


 昨日の夜仕掛けておいたご飯がちゃんと炊けてるのを確認し、俺はなるべく時間をかけないように、手早く料理をしていく。じゃないと、澪ねぇちゃんが起きてきたときに、お腹空かせた状態で待たせる時間が長くなっちゃうし。


(まぁ、あの様子だとしばらくは起きなさそうだけど‥‥)


 キッチンからリビングの様子を見ると、澪ねぇちゃんはさっきと変わらず、まだ夢の中に意識がある様子。いまだに目覚める様子はない。


「っと。こっちにも集中しないと」


 澪ねぇちゃんの様子に気が逸れて、料理の方をほったらかしてしまっていた。危ない‥‥味噌汁を沸騰させちゃうところだった。ちなみに、味噌汁を沸騰させたらダメなのは、沸騰したら風味が逃げてしまうかららしい。ほんと、料理って難しいよな‥‥。


「鮭も焼きあがった‥‥味噌汁もあとは弱火にかけつつ、温度維持だけでいいかな。あと用意できそうなのは‥‥」


 俺は再度冷蔵庫を開き、中を確認する。今のおかずだけだと、ちょっといろどりがないんだよなぁ‥‥。


「お、いいもんあるじゃーん」


 冷蔵庫にあったかぼちゃの煮物を取り出し、俺は別のお皿に移す。スーパーにある総菜もこういうところで使わないと、溜まり過ぎたら消費できなくなるからな。


「よし、こんなもんだろ」


 俺は用意した料理と箸を二人分食卓に並べる。もうそろそろ澪ねぇちゃんには起きてほしいけど‥‥。


「なんかいいにおいがする!!」


 俺が料理を並べ終わったタイミングで、澪ねぇちゃんはガバッと布団から起き上がる。なんか‥‥動物みたいな嗅覚してるな‥‥言ったら怒られそうだから、口には出さないけど。


「おはよう澪ねぇちゃん。朝ごはん出来てるよ。とりあえず、顔だけ洗ってさっぱりしてきなよ」

「はーい。航くん、ありがとねー」


 そう言ってルンルンで洗面所へと向かっていく澪ねぇちゃんを見て、俺はとあることに気付く。


(そういえば、俺も顔洗ってねーや)


 澪ねぇちゃんが戻ってきたら、俺もちゃんと顔洗おう。

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