第47話 幼馴染と同棲7
「ごちそうさまでした」
「お粗末様でした」
「お皿片づけるね」
「え? 私がやるよ?」
澪ねぇちゃんはそう言うが、夜ご飯を作ってもらったのだから、片づけはさすがに俺に任せてほしい。そもそも、澪ねぇちゃんはお客さんなんだから、なんでも任せっきりというのは申し訳ない。
「うーん、まぁわかった。じゃあ私は代わりにお風呂沸かしてくるね!」
そう言って澪ねぇちゃんは、お風呂場の方へと向かっていった。本当は俺がやりたかったけど、あの感じだとたとえ申し出たところで、譲ってくれなさそうではある。多分、俺に何も言わせないために、さっさと行ったんだろうし。
「ま、俺は俺の仕事しよ」
そう言って、俺は二人分の食器をシンクへと運んだ。
「そう言えば澪ねぇちゃん、お風呂入る順番どうしようか。澪ねぇちゃんはお客さんだし、先に入る?」
「え、一緒に入らないの?」
「何を当然のことのように言ってるの?」
ソファに座って、お風呂が沸くのを待ってる間に、俺と澪ねぇちゃんはそんな会話を繰り広げる。いや、さすがに一緒にお風呂はまずいでしょ‥‥。
「でも、航くんが小さい頃は一緒に入ったりしてたじゃん」
「それは小さい頃の話でしょうが」
「でも、その頃には私も結構大人に成長しつつあったよ?」
それはそうかもしれないけど、あの時とは違って、俺も成長してるんだから、さすがに澪ねぇちゃんと一緒にお風呂に入るというのは‥‥なんというか、法に触れそうな気がしてならない‥‥。
「お客さんなんだからいいじゃんかよー」
「そんな決まりないよ」
「ぶー、けちー‥‥あ、そうだ」
頬を膨らませて抗議する澪ねぇちゃんは、突然何かを思い出したかのような声を上げ、ポケットから携帯を取り出す。
「‥‥?」
「あ、もしもし海月さん? ご夫婦でラブラブしてるところ申し訳ありません。ちょっと、航くんのことでお話が‥‥」
「いや、なんで母さんに電話してんの?!」
スマホを耳に当て、誰かに電話をかけだしたと思ったら、何故かその相手は母さんだった。この状況で母さんに電話するなんて悪い予感しかしないんだが‥‥。
「―――あ、はい。わかりました。航くんに変わりますね‥‥はい」
そう言って澪ねぇちゃんにスマホを差し出される。本当に出たくないんだけど‥‥。
「もしもし‥‥航だけど」
『あんた、澪ちゃんと一緒にお風呂入るくらいしたらいいじゃないの。なにをそんなに拒む理由があるのよ』
「俺と澪ねぇちゃんは男と女なんですけど?!」
思わず電話口に向かって大声を出す俺。なんとなく想像していたが、やっぱりそういうこと言われるよな‥‥。
『うっさいわね‥‥私だって、お父さんと一緒にお風呂入ったことくらいあるわよ』
「それは母さんと父さんは夫婦だからだろ‥‥」
『どうせあなたたち結婚するんだからいいじゃないの。遅かれ早かれ同じことでしょ』
「全然違うって!」
またも電話口に向かって叫ぶ俺。いや、許してほしい。うちの親、感性がおかしいと思うんだけど。普通、男子高校生と成人済み女性を一緒にお風呂に入れるか?
『あのね! あんたがいつでもうじうじしてるからね、こっちはもどかしいのよ! わかったらさっさと入ってこい!』
「ちょっ‥‥あっ、切られた」
捨て台詞のように怒鳴られ、一方的に電話を切られる。さすがにもう一度電話をかけるわけにもいかない。せっかく夫婦水入らずで楽しんでるのだから‥‥。
けど、それよりも‥‥。
「一緒にお風呂、はいろっか」
「嫌だよ!?」
にこやかに微笑みながらそう誘ってくる澪ねぇちゃんをどうにかしないと‥‥。
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