第43話 幼馴染と同棲3

「ごちそうさまでした! 航くんのお料理、とっても美味しかったです!」

「お粗末さまでした。良い食べっぷりだったね」


 澪ねぇちゃんは、俺の作ったカルボナーラをものの数分でペロリと平らげて、満足そうな表情を浮かべている。そこまで喜ばれると、作りて冥利にも尽きるし、澪ねぇちゃんの食べっぷりは見てて気持ちがよかった。


「だってだって、ほんっっっとうに美味しかったんだもん! 自分でもあっという間に食べ終わっちゃって、びっくりしたし! あと、そもそも料理の手際が良すぎるんだよ。包丁捌きも綺麗だったし、時間の使い方も上手だった! あとは――――」


 俺の料理について、熱弁し始める澪ねぇちゃん。さっきから終始、この調子なのだが、そこまで言われるとさすがに照れてしまうからやめてほしい。


「と、ところでさ、この後どうしようか? 澪ねぇちゃん、頑張って仕事全部終わらせたみたいだし、ご褒美にどこか行く?」


 俺は、恥ずかしさを誤魔化すようにして、今後の予定についての話を切りだす。結局、澪ねぇちゃんはこの連休前に、大きい仕事は全部終わらせてしまい、連休中に仕事をしないといけない、ということはなくなった。けど、この連休中の予定については、結局ほとんど決まっていないので、今から決めようということだ。


「んー、今日はなんとなくお家で過ごしたい気分だなぁ。せっかくだし、お家でしか出来ないことしようよ」

「家でしか出来ないこと?」

「うん! 私、あれやりたい!」


 そう言って澪ねぇちゃんが指をさしたのは、携帯型のゲーム機『スウィッチ』だった。スウィッチは、プレイシーンによって、カタチを変えるゲーム機だ。携帯型で、持ち運びがしやすいため、いつでもどこでも、自由なプレイスタイルでゲームを遊ぶことができる代物なのだが、スウィッチのドッグをテレビにつなぎ、、本体をセットすれば、テレビの大画面でゲームをすることもできるのだ。


「いいけど‥‥澪ねぇちゃん、ゲーム好きだったっけ?」


 俺は、小さい頃の記憶を遡ってみるが、澪ねぇちゃんがゲームをしていた記憶はない。俺の見ていないところでやっていた、とかなら別だが、あの時の澪ねぇちゃんの家には、そういったゲームの類はなかった気がする。


「うん! 実は、航くんたちと離れた後に、ゲームにハマっちゃって。それ以来、ずっと遊んでるんだよねぇ。今住んでるアパートにも、スウィッチが置いてあって、機会があれば、航くんと遊んでみたいと思ってたんだよね。今日は持ってくるの忘れちゃったけど、航くんの家にあるなら好都合! 遊ぼう!」

「なるほどね。いいよ。遊ぼうか。ところで何のゲームする?」


 俺は持っているゲームカードを並べて、澪ねぇちゃんに何をしたいか選んでもらう。人気作から、俺が個人的に好きなものまで、結構いろいろ揃えっているとは思う。俺も、両親も、結構ゲームが好きだから。


「んー、あ、これしよ! 私、これ結構得意なんだ!」


 そう言って澪ねぇちゃんが選んだのは、昔から人気のあるゲームで、同じシリーズのものが何本も出ている格闘ゲームだ。いろんなゲームのキャラクターが、ファイターとして設定されていて、各々好きなキャラクターを選んで戦い、先に相手の残機を0にした方の勝ち、というシンプルなルールのゲームだ。


「澪ねぇちゃん、悪いけど、このゲームは俺も大得意なんだ。負けるわけがないよ」

「ふーん、航くんのくせに、生意気なこと言うんだ。いいよ、実力の差ってのを見せてあげるから」


 こうして、俺と澪ねぇちゃんの、容赦のないバトルの幕が開かれた。

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