第42話 幼馴染と同棲2
「さてと‥‥やるか」
買い物から帰ってきた俺は、買ってきた食材をキッチンに広げ、料理へ取り掛かる準備をする。
「私も、何か手伝おうか?」
隣に立つ澪ねぇちゃんがそう聞いてくる。申し出は嬉しいけど、今回は断らないといけない。
「ううん、大丈夫。澪ねぇちゃんは座っててよ」
「でも‥‥」
「澪ねぇちゃんはお客さんなんだから。堂々と座って待ってていいんだよ」
俺がそう言うと、澪ねぇちゃんは渋々といった様子で、リビングの方へと戻っていく。今回だけは、俺の顔を立ててもらおう。少しは、澪ねぇちゃんにいい所見せたいし。
「じゃあ‥‥やるか」
俺は水道で手を洗い、食事の準備を始める。
まずは、鍋に水を入れて、沸騰させる。沸騰を待つ間に、玉ねぎをスライス、ベーコンを食べやすい大きさにカットする。家の中には、トントントンと小刻みに包丁の音が鳴り響く。
「航くん、結構料理手慣れてるんだね。包丁捌きがすごく上手」
「ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいよ」
リビングの方からこっちを覗いて、感心した様子の澪ねぇちゃん。小学校の高学年くらいから、母親のことを手伝い始めて、そこから料理が好きになった。その好きなことを憧れの人に褒められるというのは、かなり嬉しいことだ。
そういった話をしながらも、俺は料理の手を止めない。
沸騰した水に、パスタを入れて茹でてる間に、中火で熱したフライパンにオリーブオイルを引いて、にんにく、ベーコン、たまねぎの順で炒めていく。
炒め終わったら、弱火にして、フライパンに牛乳と、小さくちぎったスライスチーズを入れて、チーズが溶けるまで熱する。
「なんかいい匂いしてきた!」
「もう少しでできるから待っててね」
チーズが柔らかくなったら、茹で上がったパスタを入れて、塩・黒コショウで味を調える。全体に味が馴染んだら、火を止めて溶き卵を全体にかけて、手早く絡める。余熱で混ぜて、溶き卵が全体に馴染んだら、仕上げに黒コショウと粉チーズかける。
これで、牛乳と全卵を使った濃厚カルボナーラの完成だ。
「お待たせ澪ねぇちゃん。カルボナーラだよ」
「えぇっ!? これ、航くんが作ったの?! すっごく美味しそうなんだけど!!」
料理を食卓へ運ぶと、既に椅子に座っていた澪ねぇちゃんは、俺の持ってきた料理を見て、目を丸くしている。さすがにそこまでびっくりされるとは思ってなかったんだけど‥‥。
「ねぇねぇ! さっそく食べていいかな? 我慢できないんだけど!」
「いいよ。召し上がれ」
俺が言うが早いか、澪ねぇちゃんは「いただきます」と言って、フォークにクルクルとパスタを絡みつかせる。多分味も大丈夫だとは思うけど、いざ食べてもらうとなると、やっぱり不安は募る。『おいしい』と言ってもらえると嬉しいけど‥‥。
「はむっ‥‥」
前髪が邪魔にならないように耳にかけながら、巻き取ったパスタを口に含む澪ねぇちゃん。そのちょっとした仕草だけでも画になるのだから、美人というのは恐ろしい。
「んっ‥‥んっ‥‥うん! すごくおいしい!! すっごく濃厚だし、卵と麺の絡みが絶妙! 100点だよ!」
ゆっくりと咀嚼した後、澪ねぇちゃんは満面の笑みでサムズアップをする澪ねぇちゃん。なんだか、この笑顔見れただけで、俺はお腹いっぱいになった気がするよ。
「そういってもらえると作った甲斐があるよ。喜んでもらえてよかった」
「うん! 航くんも食べよ! これ、本当に美味しいから! 自分で作ってるからそんなの分かってるかもしれないけど!」
興奮冷めやらぬ様子の澪ねぇちゃんに、微笑ましさを感じながら、俺もパスタを頬張る。
‥‥うん、ちゃんと美味しい。今までで一番おいしく出来たかもしれない。
『料理に一番大切なのは愛情』と言われるのは、こういうことなのかもしれない。
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